2011年10月4日火曜日

蔡英文総統候補、日本外国特派員協会で講演 10-04


今日から総統選挙投票日まで3ヶ月あまりしか残されていない。こんな時期になぜ出国し、投票権がない外国人と会う必要があるのかと聞かれることがある。しかし民進党は国際関係をきわめて重視しており、選挙期間中であっても世界との交流を怠るわけにはゆかない。特に日本は台湾にとってこの地域における最も重要な友邦であり、短い間とはいえ民進党が台日関係を重視しているという誠意を示したいと思う。
台日間の歴史的・文化的淵源は深く、日本は台湾人にとって特別の地位を閉めている。十二年前台湾が台湾中部大地震に見舞われた際、日本の救難隊は最初に支援にかけつけてくれた。日本が今年三月東北大震災で被害にあった際、台湾人はわがことのように受け止め、台湾の民間の義捐金はあらゆる国よりも多く、災害を分かち合う気持ちが強かった。これほど親近感を持っているということは、両国の緊密な関係を証明しているといえる。
台日の密切な関係は、歴史、貿易、文化、旅行、人的交流によって打ち立てられている。同時にアジア太平洋地域の平和と安定において、民主主義の価値の拡充、経済および繁栄などの共通の利益をもっている。
世界情勢はますます複雑化し、世界各国はいずれもエネルギー不足、原発安全性、金融危機、成長の停滞、所得の不均衡、高齡化社会、社会サービスコストの増大、非伝統的な安保問題など、国内外のさまざまな問題に直面している。同時に新たな勢力の台頭によって、米国が主導してきた従来の世界秩序に不確定な影響がもたらされている。明らかにこうした変化の要因は国家を超越し、ますます複雑なものになりつつあるのである。これらの問題を解決するには、国際間の多角的・多次元的な協力が必要となっている。
台日関係の基盤は確固としているが、われわれは双方の関係をさらに強化する必要がある。この方向での仕事を引き続き推進していくべきであり、それぞれの国の内政の影響を受けてはならない。民進党は台日関係強化を重視している。それは前の民進党政権時代に充分にみられたことである。野党になった今でも、台日関係を強化しようという積極的な意思は少しも減じていない。対日関係について、民進党は次のような見方をもっている。

1. 安保問題:日米安保同盟は東アジアの平和と安定の基石である。台湾はその中に公式的には組み込まれていないとはいえ、同盟の効力と強さは台湾の利害に強い影響をもっている。われわれは信ずる。中国の軍事力の拡張と挑発が目立つ現在、日米の強い同盟関係こそがこの地域の戦略的バランスを維持するものとなる。いかなる国も単一でこの問題に対応できない。軍備競争は誰もが望まない。そこでこの地域において各方面の参加と対話、そして平和と理性にもとづく領土紛争の処理、海上航行の自由の確保、軍事近代化の透明度の確保などが、重要な課題となっている。国防力の整備と自己防衛の決意こそが、平和を維持するものだと確信している。

2. 民主主義の価値:民主主義と正義は台日社会を結ぶ共通の価値である。民主主義は国民が自由な環境の中で繁栄と発展を追求するための基盤である。日本は東アジア民主主義の先頭に立っており、台湾は成熟しつつある新興民主主義国家である。われわれは内部からの挑戦に直面し、ガバナンスを向上させる必要があるとともに、対外的にはアジア民主主義のネットワークを強化し、民主化を進めている国をバックアップしなければならない。
3. 経済:台日経済関係は十分密切であり、日本統治時代に台湾のインフラ整備が行われたことで、台湾は前世紀にすでに成長と発展のための基盤を形成していた。この数十年来、台日の工業・経済発展は相互補完的な関係にあり、双方に利益をもたらしてきた。世界が金融危機に見舞われる中、両国の経済も内部的な問題に直面している。それはいかにして雇用機会を増加し、成長を刺激するかといった問題である。外部的にも、経済成長は新興勢力がリードするという趨勢にある。われわれはバランスが取れた経済関係が必要であり、新興市場に依拠してもたらされた経済成長に対しては十分なリスク管理が必要である。たとえば台湾政府が中国とECFAを締結した際、多くの人は両岸経済関係には国際性が欠如している中で急速に統合が進めば、台湾の中国に対する依存がさらに進むことを心配した。そのため、民進党は台湾と日本を含む主要国との国際経済交流関係を強化することを主張した。台日関係は強固な基盤を持っているとはいえ、日本は台湾が周縁化することを防ぎ、台湾を既存の地域統合体制に組み込み、APECを基盤とした自由貿易協定ないしは環太平洋経済協力関係を形成へと進むことが、台日双方にとって有利であると考える。
4. 旅行および双方の人的交流:数年前にノービザ政策が始められたことで台日間の旅行の利便性が向上し、両国民の距離が飛躍的に縮まった。台湾への日本観光客は、日本のソフトパワー、つまり文化、スポーツ、ビジネス、娯楽、料理、技術などが台湾で大きな力を持っていることを認識した。台湾はまた日本に、いかにしてソフトパワーと公共外交によって国際社会での認知を高めるかを学ばなくてはならない。台湾人は創意開発に努力してきた。今後民進党が再執権した暁には日本の人たちが日本国内でも台湾の映画、音楽、その他の文化商品をたしなめるよう力を入れたい。

さて、両岸政策について語ろう。この場では台日関係と台湾の選挙について語るのが適切だと思われるが、多くの人が私の中国に対する見方を聞きたがっているのでご説明したい。
両岸関係において、平和と安定の維持が、われわれの目標である。台湾人が経済繁栄によってようやく獲得した政治的自由と今の生活のあり方を守ることである。われわれはまた人々が台湾の前途を決定する権利を擁護し、台湾の現状のいかなる変更も民主的な手続きを通じて台湾人の同意を得るべきだと考える。
われわれは台湾海峡の平和と安定の維持を擁護する。これは台湾人への約束であり、地域に対する責任だからである。中国との間で『和而不同、和而求同(和して同ぜず、和して同じくを求める)』との戦略的理解を行うことが、最も現実的なやり方だと考える。
北京は一つの中国原則を台湾政策の基本的な立場としている。しかし、北京側は次のことを理解すべきである。台湾人が外来民族の支配を受け、民主主義を希求し、最終的に自由を獲得した以上は、一党独裁に絶対に反対し、台湾の主権をまた絶対に保持する意思を持っているということである。しかしながら双方の立場の違いは、台湾と中国がともに平和と発展の互恵を求めることに衝突しない。
台湾ではじめての土着政党として、民進党は台湾がやっと勝ち得た民主主義、自由、人民が国の前途を決定する権利を絶対に死守する。民主主義はイデオロギーというだけではなく、生活のあり方そのものであり、憲法が規定する義務でもある。台湾の総統はこの義務に服しなければならない。そのため、私は台湾コンセンサスというものを提唱した。民主主義と全国民の参加によって、中国と往来するうえでのコンセンサスの基盤である。両岸が対話を行うための前提には、透明でなく、民主的手続きによるものではないものであれば、両岸関係に益するものはないと考える。民主的コンセンサスを背景にしてこそ台湾の多数の民意を基礎にして、両岸の長期的で安定した関係を維持できると考える。
両岸に存在する差異についてナイーブに考えてはならない。しかし同時にわれわれは誠意を尽くせば天地が心を動かされる。もし双方が誠意をもって平和的で安定した交流の枠組を打ち立てれば、眼前の難題はいずれも少しずつ解消されよう。目前の両岸関係の膠着状態は歴史の産物にすぎず、将来はゼロサムであるとは限らない。私は北京の指導者とともに互恵、明智、責任ある方式で、平和と発展を共通の言語として、両岸関係を推進してゆきたい。
中国側が台湾の選挙情勢を注意深く観察していることは間違いない。かつて彼らは台湾の大型選挙に介入しようとしてきたが、そのたびに逆効果となってきた。台湾の民主主義と国民の選択には自信を持つべきである。選挙の結果は往往にして多くの要素が介在するが、ひとつの政策の成否だけで選挙の勝敗を占おうとすることは誤った態度である。私は中国の指導者に対して、選挙が台湾人に対してもつ意味とは何かについて、もっと柔軟に慎重な態度で直視すべきであるといいたい。そうしてこそ勝者のほうともプラスの交流が可能となるのである。
事実、今回の選挙において、最も注目されている争点は社会・経済問題である。日本と同様に、台湾は国民の経済、仕事、所得の上での不均衡、社会サービスなどへの切迫感などの課題を抱えている。台湾は日本と同様に、原発の安全問題、将来のエネルギー政策などの問題を抱えている。これらの問題について民進党はすでに2025年までに原発を全面停止することを宣言している。この実現のためには多くの心力を尽くす必要があるが、われわれはまた代替再生エネルギー関連施設を建設する決意をもっている。台日が協力してグリーンエネルギー技術と投資機会を創出することも、今後の両国交流の重要な領域であると考える。
選挙まで数ヶ月となった今、こうした公共政策が重要な争点となっている。民進党は台湾人に対して、政策的な面で民進党が進歩的で洞察力があるという点を納得させる必要がある。人々のニーズに応えて責任を負っていかねばならない。政権担当については競争力とよいガバナンスを提供する。
過去から現在にかけて民進党は台湾の民主化とともに成長してきた。八年の政権担当経験および過去三年間の反省と努力を通じて、われわれは再度政権を担当する準備ができている。人々の自信を取り戻すことは容易なことではない。それは少しずつ足を踏みしめていくべきであり、民進党はそれをやり遂げるであろう。
最近の世論調査によれば、選挙戦は熾烈で、両党の支持率は拮抗している。選挙結果も双方の得票率がきわめて接近すると思われる。しかし確かなことは、台湾人が民主主義に対して強い信念を持っているということである。民進党支持層の情熱と現実性、選挙チームの一致した努力で選挙戦を勝ち取って生きたい。私は自信を持っている。来年の台湾は初めての女性総統を生み出すだろうと。私が勝利することは、台湾社会の進歩と開放の証明となる。民進党は責任あるガバナンスを実現し、国民の支持と自信を結集する。
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