2011年10月1日土曜日

民主進歩党【十年政綱(マニフェスト)】 両岸経済関係(対中関係)編


Ⅰ.情勢と課題

台湾は海洋国家であり、貿易は台湾経済の根幹である。四方に面した海に向かって発展し、八方にある海洋のあり方こそが、台湾の生命力の源である。台湾国民は半世紀にわたって努力し、作り上げてきた経済貿易の版図を大切にし、世界的に注目されている経済的な実力を強化するべきである。
両岸の経済関係は、台湾のグローバル戦略の一環であるが、あくまでも国際貿易の一部であり、唯一のものではない。世界各国との間に多面的で均衡ある、そして持続的かつ対等な経済関係こそが、台湾の持続的発展にとって重要な鍵である。そしてまたそれは台湾海峡の安全を保障する基盤となる。このため、台湾が両岸経済関係を発展させるためにはその他の貿易相手国との経済関係も強化する必要がある。多国間の枠組みこそが海洋国家である台湾の基本戦略だからである。
中国は前世紀末の改革開放によって門戸を開き、その豊富かつ低廉な労働力を武器に外資を大量に引き寄せ、瞬く間に「世界の工場」となった。台湾は90年代初期に国民の中国への投資を解禁して以来、台湾の資金・人材・技術が大量に中国に流れ出した。中国は経済成長を続けたが、経済的福祉を実行していない。台湾の経済成長は鈍化し、実質賃金は停滞、失業率が上昇し、貧富の格差は拡大してしまった。
台湾の中国に対する投資の傾向は、川下の労働集約型産業から先に進出し、その後川上産業もそれに追随した。われわれが一貫して強調してきたこれに対する対策とは、川上技術の先進性を維持し、研究開発部門やオペレーション本部を台湾に残しさえすれば工場移転を恐れる必要はなく、台湾自身の経済発展にも希望が持てるというものだった。しかし現実はそうではなかった。これまで中国は低廉な労働力によって台湾の労働集約型産業を引き寄せ、「中国の台頭」という奇跡を起こしただけでなく、現在の中国は産業転換し、垂直統合の方法によってもともと中国の部品組み立て工場に部品を提供してきた台湾の川上産業を引き寄せている。川上産業が中国に買収されたり、中国に移ったり、中国製品にとってかわられたため、「研究開発部門」と「オペレーション本部」だけでは台湾経済の衰退を取り戻せない状態に陥りつつある。
そこで、両岸経済交流の得失については即断できない。台湾は新たな思考と視野を持つ必要がある。台湾自身の経済体質を強化し、世界各国との経済的結びつきを強めることによってのみ、世界経済システムの中で存立と影響力を及ぼすことができる。もし単に相手側の善意に期待するだけで、自らの命運を他国の気まぐれに依存させているだけでは、新天地を開拓するためのエネルギーと未来に挑戦する勇気を持つことはできないであろうし、経済的自主性を維持することはさらに不可能となるだろう。このため、両岸経済関係は台湾の国際貿易・産業経済を発展させるという前提で進められるべきである。要するに、四方に面した海に向かって発展し、八方にある海洋のあり方こそが、台湾の特色なのであり、台湾の禍福の源なのである。


Ⅱ.核心理念

(1)台湾の国際競争力強化
両岸の経済関係の重要性は言うまでもないが、両岸はグローバルそのものではなく、中国市場は台湾のグローバル展開の一環にすぎない。両岸だけに注目してグローバル展開を無視するならば台湾はグローバル経済システムの中で周縁化するだけであろう。
台湾は経済関係においては世界を常に考え、国際競争力の強化を常に念頭に置くべきである。中国との経済関係を発展させるとともに、世界各国との関係を強化し、グローバル経済のなかでのバランスを求めるべきである。

(2)維持台灣的經濟自主性
台湾は産業構造の強化を目指し、企業経営と製品の研究開発能力を高め、台湾の経済的自主性を維持しなければならない。台湾はグローバル分業体制の中で重要な地位を維持し、技術の先進性を守ることを基本とすべきである。そして中国との間で互恵的かつ一方的に利益を譲歩することがないよう、平和的であって衝突が起こることがないよう、さらに体等であって従属関係が起こることがない経済関係を発展させるべきである。

(3)台湾の経済的弱者の権益を擁護
台湾は両岸関係関係の発展において経済的弱者の存在に関心を持つべきである。政府は両岸経済関係がもたらした賃金の停滞や所得分配の悪化などの問題を直視し、弱体産業や経済的弱者の経済的地位に関心を持ち、両岸経済関係の果実が全国民に共有されるように対策を採るべきである。


Ⅲ.政策主張

(1)グローバル経済戦略を進める
台湾は米国、EU、日本、インド、ASEANなどの国家および地域機構との間で自由貿易協定(FTA)の締結、およびその他の国や多国間機構との間で経済枠組み協定の締結を進める。それによって主要貿易相手との経済的結びつきを強め、バランスある国際経済関係を発展させることができる。

(2)両岸対話の枠組みを見直し、規範化する
1、ECFAと両岸経済の後続の話し合いは民主的な手続きにもとづくべきであり、台湾の全体的利益の観点から慎重に現在までに締結された協定の中身と執行状況を審査し、見直すべきものは見直す。
2、ECFAの交渉、通報、執行はすべてWTOの枠組みとルールにもとづいて行うべきである。両岸はWTOの会員国としての権利と義務に従うべきである。
3、台湾の対中投資家の人身の自由と財産の保護に関する協定締結を今後の交渉の最優先課題とし、投資家湾の実質的保障を重視する。

(3)両岸貿易の公平性を保障
1、台湾は経済的自主性と貿易の公平性という前提の下で、中国市場を含む世界市場に積極的に展開すべきである。
2、台湾は中国に対して非関税障壁と不公平待遇の廃止を要求すべきである。台湾投資家が台湾の商品をサービスを中国市場においても公平な競争環境の下で発展させるようにすべきである。
3、中国の輸入は消費者と弱体産業を保護することを原則として、中国によるダンピングや不当な補填や中国の劣悪商品の流入を阻止し、台湾市場の公平競争性を確保する。

(4)台湾への中国資本流入を厳格に管理する
1、中国資本が台湾の国家安保、金融の安定性、技術開発の秘密保持、経済的自主性に危害を及ぼすおそれがある場合、禁止すべきである。
2、政府は中国資本に対して、その利害関係者の身元や資金の出所を明らかにするよう要求すべきである。
3、中国資本が台湾に投資する場合、実際に経済ないし生産活動に従事しており、投資名目で資金操作や土地ころがしなどバブル経済を引き起こす要因に関係していないことを証明しなければならない。

(5)台湾企業が中国に投資する場合、雇用と生産の拠点を台湾に残す規定を設ける
1、政府は製造業の産業関係者が中国労働市場とその内需市場の磁場効果によって中国に流出することを効果的に防止しなければならない。
2、政府は企業に対してその管理、研究開発基地を台湾に残すよう誘導すべきである。台湾企業のブランド、商品、サービスを中国をはじめ世界各地に売り込めるようにし、台湾の雇用と実質的経済活動の基盤を台湾に残すことである。

(6)両岸金融交流の有効的管理体制を強化する
1、政府は「本国監理原則」にもとづいて、台湾の金融機関が中国に支店・出張所を設ける際に発生するリスクから守るべきである。
2、政府は両岸金融リスクのファイアウォールを設け、中国の系統的な金融リスクが台湾の金融の安定性に影響を及ぼすことがないようにすべきだ。両岸の金融危機に対する対応は、責任および義務は国際ルールにもとづいて処理されなければならない。
3、台湾の金融機関が中国市場に進出する場合、台湾投資家が業務許可と現地資金を獲得できるよう支援し、台湾投資家に対する金融サービス支援体制を確立すべきである。
4、中国資本の銀行が台湾において金融活動を展開する場合には、公平な競争と透明化の原則に合致しなければならず、効果的な監視を行い、国家的利益を確保しなければならない。

(7)観光客と専門的な人材を効果的に受け入れることで、対中交流のマイナスの影響を軽減させる
1、中国観光客の来訪は台湾国民の多数が総合的に収益を確保することを目標とする。台湾の観光資源は中国観光客のためにその他の国からの観光客を排除する結果が生じないようにする。
2、ホワイトカラーの専門的人材が台湾に来る場合は、台湾の科学技術と経済成長を促進することが目的でなければならない。しかも台湾の雇用市場が受容可能な範囲でなければならず、台湾人の雇用機会を奪うものであってはならない。

(8)弱体産業の競争力を改善する
1、政府は実質所得と雇用機会を拡大し、所得分配を行うための経済的政策および社会福祉政策を是正すべきである。
2、政府は弱体産業のレベルアップや構造転換を支援し、弱者に対する両岸経済関係のマイナスの影響を軽減させるべきである。

(9)両岸経済関係における自主性を守る
1、両岸間では、経済発展の条件と程度が異なっている以上、台湾は独自の経済政策を策定、執行し、中国の経済計画に盲目的に合わせる必要はない。
2、台湾は国際分業体制における中国への優位性を確保するため、高付加価値の産業が生産リンクと周辺産業を確保すべきである。台湾の資源と人力は相互にリンクさせ、台湾経済との連結を強化し、両岸経済関係における台湾の主導権を確保すべきである。
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