2014年8月12日火曜日

蔡主席 台湾大学フォーラム演説「台湾の未来」プレスリリース


民主進歩党蔡英文主席は12日、台湾大学フォーラムに招かれ、「台湾の未来」と題した講演会を行った。演説の全文は以下の通り。
皆さんこんにちは。

今日は台湾大学フォーラムにお招き頂き、講演の機会を頂いたことを光栄に思います。この2週間ずっと、台湾社会は高雄のガス爆発事故に関心を寄せてきましたが、この全国民が驚愕した事故で、皆が協力して高雄の復興に力を入れなければならない時期に、私は今日のフォーラムに予定通り参加し講演をした方がよいかどうかと迷いました。しかし、高雄のガス爆発によって明らかにされた台湾の様々な問題を考えた際、今日のフォーラムのテーマである「台湾の将来」と密接に関連があることであり、今日の機会を捉えて皆さんと台湾の現況と将来についての考え方を共有し、同時に高雄のために発言したいと考えました。   

高雄の災害は多くの国民の命と財産を奪い、台湾社会は悲しく耐え難い事故を経験することになりました。災害発生の後、市長は他の市の救助隊と連携しながら復興作業に取り組み、社会各界から義捐金が集まり、ボランティアが次々高雄に入りました。全国各界からの呼びかけで、中央政府も処理協力と再建の面で少しの動きを見せてくれました。

台湾は一つであり、どこでどのような重大災害や事故が起こっても、それは全台湾に関わることであります。誰一人無関心ではいられません。あなたか自分か、中央か地方かに関わらず、皆が共同で対応することで、困難を克服し、傷を癒し、正常の生活に戻していくことができるのです。政治は人々のことであり、もし目の前の台湾の政治が、重大災害や事故に際しても、まだブルー(国民党派)かグリーン(民進党派)か、中央か地方かといった区別をしているならば、我々は共同で台湾の政治を変える努力をしていかなければなりません。そうすることで初めて、台湾の社会と人々の力を集めることができ、痛みから抜け出し、未来へと歩んでいけるのです。

高雄のガス爆発は事故でしたが、台湾の長期にわたる根本的な問題を明らかにしました。高雄市は今日市街地に危険な石油化学配管が張り巡らされており、以前のGDP成長至上主義での、安全と環境保護を無視した経済発展による産物といえるものです。石油化学産業の安全、配管管理や設置、安全チェック等が長期にわたり疎かにされ、基になる管理の法律さえなかったのです。重大な災害の防止と救援作業でも専門機関の主導がなく、それが今回の悲惨な事故を生み出したのです。

よって、高雄の再建を進めるためには、これらの根本的な問題に向き合う必要があり、我々は高い経済成長を維持するためといって、高雄の環境と土地、住民を引き続き大きな危険にさらし続けたりしてはいけません。また、これからもずさんな管理体制によって高雄市民を不安全な生活の恐怖に陥らせてはいけません。

よって、中央と地方が一緒に最短の時間で高雄と全台湾の地下配管の安全を確保することは、最も重要なことであり、新任の経済部長はこれを最優先の仕事とするべきであります。その他、長い間高雄市街地にこれほど多くの危険な配管があったということは、石油化学産業の配置にはおかしな部分があったことを示しています。新しい計画も多くの環境保護と安全の問題に直面しています。よって、長期的な計画で石油化学産業を向上させ、高品質化、並びに廃棄ゼロ、排出ゼロ、事故ゼロを目指す事を目標に努力しなければいけないでしょう。中央と地方は力を合わせて全般的な規則を作り、業者が向上し転換を図るのを支援する必要があります。これについて、民進党は石油化学産業向上化チームを成立しました。業者と環境保護団体と関連する専門団体とが積極的な対話を進めることを希望しています。将来の高雄の復興は、災害地区の道路、交通、生活機能の復元、再建のほか、同時に石油化学産業と都市の安全、市民生活の間に横たわる問題を同時に解決していく必要があります。そして、石油化学産業の推進について、考えを改めて計画を立て、台湾経済の転型問題をも最終的に解決していきます。更に地域のバランスよい発展と資源の合理的な配置を重視し、高雄の産業転型と永続的な成長に可能性のある道を見つけていくのです。ここで、我は真摯に呼びかけます。台湾にプラスとなる変化を積極的に進めなくてはいけません。我々はそれを高雄から開始していきましょう。

そして以下は、私が皆さんと分かち合いたい、台湾が直面する世界の変化と台湾にとって必要な新しい発展戦略です。

近年台湾が直面している国内外の挑戦は日に日に困難を増しています。金融危機以後世界の経済成長がゆるやかになり、経済のしくみと産業の供給には非常に激しい変化がありました。地域経済統合の加速によって世界の経済情勢が一変しました。   台湾の発展への影響は日に日に大きくなり、中国の躍起と両岸関係が台湾の将来を左右するものになっています。

では、ここで台湾の経済発展のモデルを見てみましょう、先ず、台湾は1960年代から輸出がメインの経済成長モデルを成功させ、この10年来グローバル化の趨勢に対応し、更に一歩ICT産業を主力に発展させ、「台湾で受注、海外で生産」で代替生産輸出の成長モデルをとってきました。しかしこの成長モデルは、一方で国内の就職と給与を見合わなくさせる問題を生み、所得分配の悪化を招き、また一方で世界の需要供給構造の変化の影響を受けています。もし早く調整、改変させることができなければ、台湾の将来の経済成長は必ずや厳しい試練を受けることになるでしょう。

次に、「中国要素」は台湾の将来の発展が必ず直面しなくてはならない挑戦であります。中国のGDPはアメリカに次ぎ世界第二位となり、その市場吸引力によって、台湾の投資と就職の機会がますます中国に流出しています。台湾の優秀な人材と産業の核心技術も、高い給与と日増しに拡大している産業連携のもとで、大量に中国の人材と技術不足を満たすという事態になっています。近年中国は経済の転換に力を入れ、中国資本企業が台湾企業からヘッドハンティングや、技術の模倣や真似を行い、台湾企業にプレッシャーをかけています。しかし馬政府の両岸政策はむやみに市場を開放するだけで、リスクを考慮しないばかりか、積極的に台湾の投資環境を改善しようとしていません。2010年にECFAを締結後、更に両岸の自由貿易関係を加速させていき、両岸サービス貿易協定をぞんざいに締結し、両岸貨物貿易協定の交渉を加速させています。事前に産業と就業等に与える衝撃の評価もしっかり行わず、社会や産業界と十分な討論や意思疎通もありませんでした。これが今年3月のサービス貿易協定に反対したひまわり学生運動に繋がる重要な一因となったのです。

その他、「環太平洋パートナーシップ協定」、つまりTPPや、「東アジア地域包括的経済連携」、RCEPなどの地域経済統合の勢いが加速している中で、馬政府は両岸のサービス貿易や貨物協定ばかりを考え、どのようにすれば主要な貿易相手国と自由貿易協定(FTA)を結び地域経済統合へ参加できるかについて考えていません。結果台湾は中国市場に一層依頼することになり、世界と繋がるという目的から次第に遠ざかっているのです。馬政府主導下のサービス貿易協定、貨物貿易協定の話し合いについて、台湾の社会は馬政府が「グローバル」と偽って「中国化」を推し進めていることを憂慮しており、多くの人たち反対の声が鎮まらない大きな原因となっています。

グローバル化の新しい情勢と経済情勢が急速に変化する中で、台湾が地域と世界経済の舞台上で鍵となる役割を発揮するには、全面的に新しい発展戦略を構築し、核心的な競争力を強化し、台湾がアジア太平洋地域と全世界にその重要な価値を最大化させていくことが必要であります。  

台湾は開放的な島国経済であり、内部の構造的な問題と日増しに激しさを増す国際競争に対して、輸出と内需を両立させ、グローバル化と地元化を連結させる必要があります。イノベーションをベースにし、就職機会と給与を増やし、人々の生活福祉を目標とした新しい経済成長のモデルを作ることです。将来台湾は産業イノベーションを強力に推し進め、イノベーションを通じて新しい商品、技術、サービス、販売のモデル作り、同時に台湾の人口構造の変化と生活品質を向上させることに関連する産業と、社会の基礎建設に力を入れる必要があります。イノベーションと高品質の投資を経済を動かすためのエネルギーにします。民進党は公民経済会議を開き、社会と産業界の対話と討論を通じて、最も台湾経済の発展に合った新しいモデルを探し出していくのです。

台湾は一つの民主、開放、多元的な社会であり、我々の多元文化は自由の特質と生命力を象徴しています。そしてイノベーションと進歩を促す力でもあります。台湾の文化の多元性は大きな包容力を持ち、我々は素早くスムーズにアジア各国とつながり、更に一歩、我々と全世界を繋げていくのです。また一方で、台湾の民主制度と価値はアジアの平和と安定を維持するための重要な礎であり、我々はアジアの民主化のしるべとなるだけでなく、中国の将来の発展や両岸の平和と発展、地域の安全と安定に無視出来ない影響力を持っていくのです。

台湾は自己の戦略価値と優勢を十分に発揮し、多元文化と民主価値を資産にし、地域と世界の役割において、他の国家と協力し、共同で地域の平和と安定を維持し、台湾が国際社会の一員としての責任を尽くせるようにしていきます。

両岸関係において、台湾の自主性を保つことが核心的な問題であり、我々は両岸経済貿易の連結を排除したり排斥したりする必要はありませんが、台湾は同時にTPPRCEPなど、地域経済の統合に参加していく必要があります。我々はより戦略を持ち、全方位的にFTA締結を推進し、積極的に幾つかの貿易協定の交渉を進める必要があります。同時に、我々は主要貿易パートナーと連結し、更に積極的に東南アジアやインド等の新興市場に入り、全方位的に対外自由貿易と投資関係を推し進めていきます。アメリカ前国務長官のヒラリークリントン女史が、メディアの訪問を受けた際に台湾に提起したことは、経済の自主性を失うことは政治の自主性にも傷をつける、ということでした。ここがまさに民進党と馬政府が最も異なる点であり、我々の主張は、バランス良く、且つ多元的な経済貿易戦略を持って、台湾の経済の自主性を保つことであり、そうすることで外からの干渉を受けることなく、我々の民主、自由、及び政治の自主性にも傷を付けられることはないと考えます。

我々は両岸の長期的な異なる考えかたを直視し 、積極的に両岸争議の解決の道を求め、民進党は確固として、実務的にしっかりと歩みを進め、対岸と新しい交流とコミュニケーションのモデルを作ることで、平和で安定し発展する両岸交流関係を実践させていきます。
最後に、私は以下をもって結びの言葉とします。台湾の将来の鍵は我々の選択にあります。目下台湾が面している、かつてないほど多い国内外の挑戦は、非常に難しい状況にありますが、政治のリーダーとして、政党の責任者として、台湾が面する局面や問題を十分に理解し、台湾が進む方向と将来のビジョンを示し、皆さんを引っ張り、心をともに困難を克服し、目標に向かって邁進していきます。

台湾の将来は、皆さんが長い目でみた理性的な判断をもって、共同でビジョンを構築していくことが必要です。そして皆さんの知恵ある選択、集団の意志の力を集め、ともに変化を推し進め、未来のビジョンを実践していくことが必要です。

今日は、ここにいる皆さんと、私の台湾の将来に対する見方を分かち合ったことがきっかけとなり、ともに話し合いながら、台湾が前進する方向と力を見つけ出していけることを希望しています。このタイミングで、高雄に助けの手を伸ばし、高雄の復興と構造転換のために、長続きする解決方法を探し出し、全ての問題を一度に解決していこうではないですか。皆さんありがとうございます。



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