2012年9月24日月曜日

9/21  「中国の台頭とアジア太平洋地域の安全」国際シンポジウム開幕スピーチ


台湾安保協会羅理事長、日本李登輝友の会川村常務理事、ご参加の国内外の皆様、おはようございます!

 今日私は「中国の台頭とアジア太平洋地域の安全」国際シンポジウムに参加できて大変嬉しく思っています。このシンポジウムが開催されるタイミングは、丁度アジア太平洋の安全情勢が不安定な時期でもあり、とりわけ関心を集めることでしょう。

中国の台頭によって生じた矛盾する感情

 「中国の台頭」はもはやひとつの話題ではなくて、現実であります。「中国の台頭」が国際社会にもたらす影響は、広く政治、経済、軍事、エネルギー、外交、環境保護および民主など各方面に及んでいます。「中国の台頭」の華やかな一面を見て、チャンスを逃すべきではないと中国市場に進出することを主張する人もいれば、「中国の台頭」はアジア太平洋地域の覇権となり、地域の安全を不安定にさせると心配する人もいます。中国は自己矛盾に陥っております。国内には「安定した政権維持」を強調し、来たる18全大会での円滑な権力移譲の実現を確保し、国外に対しては、大国が国際社会に果たす責任を回避しようと、「韜光養晦」-実力を隠すこと-を決め込んでいます。このことが、アジア太平洋地区の各国が中国に対して期待と警戒という矛盾した気持ちをもつことになっているのです。

近頃の尖閣諸島と南シナ海での衝突の遠因

 2009年年末、アメリカオバマ大統領就任後初のアジア・中国訪問に先駆けて、多くのアジアの国々は、中国の急速な覇権拡大を防ぐために、アメリカに引き続きアジア太平洋地域での影響力を強化するよう呼びかけました。案の定、北京は「責任あるステークホルダー」として、国際的な期待を満足させることができないだけでなく、更にチベットや南シナ海、そして台湾の主権領土までも「核心利益」として、アジア太平洋地区の平和秩序に挑戦しています。
 
これによって、2010年から、我々はひっきりなしに、朝鮮半島、東シナ海、南シナ海等の地域で、アメリカと中国2強の外交、軍事の戦いを見てきています。アメリカは、中国の「封じ込め」を否認し、「戦略と経済対話」のしくみを通じて中国と交流するとしていますが、アメリカが中東戦争の後、アジア太平洋の安全同盟国の訴えに呼応し、外国と国防の政策において「アジア回帰」したことは否めません。アジア太平洋地区の安全に強力な主導権を取り始め、「リスク回避」と「再調節」といった衝突防止戦略をとり、同時に日本、韓国、インド、ASEAN諸国とオーストラリアなどの安全同盟国との関係を深化させてきたのです。台湾は「アメリカのアジア回帰」という安全な環境にありながら、馬英九政府の両岸政策があまりにも「傾中」している結果、安全上の隙間となってしまっているのです。このような視点から見て、最近の尖閣諸島と南シナ海情勢の緊張の高まりは、決して突発的なものではなく、早くに遠因を探せるものであり、中国の近年の積極的な遠洋海軍力の強化や、第一列島線だけでなく第二列島線も突破しようと試みる、中国の海上権益戦略と密接な関係を持っています。
 
もうひとつの衝突を激しくする不確定要素は、主要国家が近頃国内政治の変化に面していることです。来る中国の18全大会で権力の移譲が行われること、韓国とアメリカで大統領選挙を控えていること、日本も総選挙の可能性があり、台湾では馬英九政府が政策に成果を出していない事から、民衆の支持が低いことなどです。多くのリーダーが、国内政治の不安定性から、外交の話題を利用することで国内の関心を逸らすようになり、それが問題をいっそう複雑にし、ちょっとした不注意が思いがけないこととなり、軍事衝突の引き金にもなるのです。
特に尖閣事件のあと、中国国内では数十の都市で大規模な反日デモが起こっており、収集のつかない状況が発生しています。これを、背後に中国政府の計画的な組織動員がある反日デモだという人もいますが、この社会のエネルギーは、政府に対する不満の感情に転化する可能性があるものです。中国の指導者は、経済が下降し、権力の引継ぎが行われる敏感なこの時期に、このような極端なナショナリズムがコントロールできなくなってしまう可能性に、戦々恐々としています。
台湾はこのように変わりやすい争いの最中にあって、尖閣諸島と南シナ海での主権を主張する立場を堅持していくほか、それ以上に重要なのは、これらの地域の安全戦略の変化を国家の安全政策に考慮に入れることであり、それがバランスをとる手段であります。
 
民進党の尖閣諸島と南シナ海についての見解
 尖閣諸島の事件を例にとってみると、過去民進党政権の時には、台湾、日本両国とも尖閣諸島の主権を堅持し、漁業紛争もたまに聞くところでありました。しかし両国政府は外交手段や漁業協議を通じて、意見の相違を解決してきました。8年間10数回の漁権会議を行い、尖閣が台日外交の危機となることはなかったのです。私が行政院長であったとき、台日両国の観光の相互訪問人数が新記録となり、日本は台湾人にとって最も友好的な外国の一位となりました。

 その逆に、馬政府就任後この5年間は、台日漁業会談は一度しか開かれていません。2008年の馬総統就任後1ヶ月も立たないうちに、尖閣諸島海域で聨合号事件が発生しました。このときの行政院長だった劉兆玄は、「一戦も辞さない」とさえ言い放ったのです。四年後、馬総統の再選間もない7月には、保釣活動家(尖閣諸島を中国領土であると主張している活動家)が、尖閣諸島にむかい主権を宣言し、台湾政府は巡視船を派遣して護衛にあたりました。結果彼らは、中華人民共和国の旗を取り出したのです。8月初旬、馬総統は「東シナ海平和提議」を提唱しました。しかし、その後すぐに、台湾公務船が再度香港の保釣活動家の上陸を援助し、彼らは「尖閣諸島は中国のものだ!台湾は中国の一部分だ!」と叫んだのです。馬総統は平和提議を提唱する一方で、上記のような言行不一致の行動を行い、外界に台湾と中国が協力したような誤った印象を与えているのです。

 民主進歩党の尖閣諸島の立場は、政権を担っていた時から野党の今日まで終始一貫しています。我々は領土の主権、平和外交解決、衝突の拡大回避、台日外交優先、台湾漁権の保護、中国と提携しないということを強く主張しています。誤った判断で制御できなくなる状態を避けるために、民進党は関係機構の皆さんに冷静に対処することを呼びかけています。昨今の日本政府による尖閣諸島国有化宣言は、既存の緊張を増幅させるだけであり、地域の安定に寄与しないと考えております。我々は、馬政府に、日本政府と即時交渉することを呼びかけています。と同時に、中国が台湾海峡に勝手に領海線を引いていることに対して、未だ馬政府は中国対して厳重な抗議をしておらず、これは、国際社会に台湾は中国の一部であるという印象を深めており、民進党は馬政府に中国と外交交渉を進め、台湾の主権と漁民の権利を確保するよう求めています。
 
 南シナ海における対立では、民進党執政時には「南沙提議」を提出し、太平島の主権を堅持してきました。しかしながら、平和的な交渉を通し、公海航行の自由を守らなければならないことも呼びかけてきました。台湾は積極的に関係各国と対話をし、ASEANの対話から外れてはいけません。民進党はまた、中国が勝手に南シナ海諸島に三沙市を設立し、太平島を三沙市の行政管轄下においたことに対して、馬政府が主権を守る行動を見せることを求めています。南シナ海の対立において、国際社会に、馬政府と中国が協力していると思われないようにしなければなりません。

以上が、アジア太平洋地域の流動的な安全情勢において、台湾が果たすべき役割であり、それが平和と安定を促進する力となることを民進党は信じております。我々は明確に、主権、平和、安定、対話、漁権、及び中国と一切協力しないという立場にたっています。

民進党中国政策の戦略思考

 民進党はかつて政権を担い、現在は野党でありますが、台湾の国益に合致し、台湾海峡の平和的な交流を保証し、地域情勢が安定する中国政策を策定することに力を尽くしています。民進党は最近、中国の18全大会での権力移譲と、その後直面する経済、社会、人権の挑戦に係る公開フォーラムを主催しています。将来は中国の「庶民社会」との対話を深めて、中国を全般的に理解していいきます。

 また、更に重要なことは、民進党がどのように「台頭する中国」に対処するかという討論と政策は、選挙の策略とか国内の政治戦略としてではなく、むしろ、先ほど述べたアジア太平洋地域で起こっている変化に取り入れることと考えます。同時に、台湾がアジア太平洋安全と防御ネットワークの重要な中心となるよう、アメリカ、日本などの国との対話協力を求めていきます。

 新しい指導者を迎えたあとの中国の不確定性と、中国の経済、社会の隠れた不安要素に対して、民進党は、台湾がアジア太平洋国家とともに、一層慎重かつ包括的な態度で変化に対応しなければならないと考えています。対立の代わりに対話で、平和で衝突を解消し、民主で将来を決定させましょう。

 最後にもう一度、お招きに感謝申し上げますとともに、大会のご成功をお祈りいたします。ありがとうございました。

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