一、基本綱領
我が党の基本主張
(一) 主権が独立した自主的な台湾共和国の建設
国家の領域主権と国民のアイデンティティの確立は、現代主権国家が国内的に法的・政治的秩序を確立させ、対外的には国際外交を発展させるうえでの前提条件である。台湾の主権独立、すなわち台湾が中華人民共和国に属せず、台湾の主権も中国大陸に及ばないことは、歴史的事実であり、現在の状態でもあり、また国際社会においても共通の認識となっていることである。台湾はこうした主権独立の事実にもとづいて、新たな憲法を制定し、新たな国家を建設しなければならない。そうしてこそ、台湾社会という共同体とここの国民の尊厳、安全を確保するとともに、人民の自由、民主、幸福、正義および自己実現を追求する機会が提供されるのである。しかしながら、国民党は「全中国唯一の合法政府」なる虚構に基づいて、巨大かつ不合理な「中華民国五権憲法体制」を長年にわたって維持し、その反民主的な統治と特権の維持に汲々としている。台湾の主権の現実に背く、国民党のこうしたやり方は、台湾内部において憲政改革の行き詰まりをもたらし、対外的には中共の野心を呼び起こす結果となっているばかりでなく、こくさい的にも国際法ならびに国際政治の現実に反し、国際社会への正常な参加を不可能にさせている。さらには、台湾住民の国家意識の曖昧化、文化発展の阻害を招来しているのである。そこでわれわれは、
1. 台湾主権の現状にそって、独立建国し、新たな憲法を制定して、法的・政治的システムを台湾社会の現状に合致させ、さらに、国際法の原則を基づいて台湾を国際社会に復帰させること。
2. 台湾主権の現状にそって、台湾国家の領域主権、及び人民主権の範囲を改めて設定し、台湾海峡の両岸について、国際法に基づいて相互往来のための法秩序を制定し、双方の人民が往来を行う際の権益を保障すること。
3. 台湾社会の共同体という土台のうえに立って、文化の多元的な発展を保障することによって、国民教育の中身を制定しなおし、人民が台湾の国家・社会・文化に対するアイデンティティを自然に醸成することができるようにし、現状に合った国民意識を確立すること。国民主権の原理に基づいて、主権が独立した、自主的な台湾共和国を建設し、新たな憲法を制定すべきであるという主張は、台湾のすべての住民による住民投票によって選択、決定されなければならないこと。
(二) 民主自由の法的・政治的秩序
民主的で自由な国家は、あらゆる暴力と専制を排除し、国民の自由意志・自主決定を基礎とした法的・政治的秩序のうえに打ち立てられなければならない。同時に、以下の基本原則も遵守されなければならない。基本的人権の保障、国民主権、台湾原住民族の自治権、権力分立とチェック・アンド・バランス、責任のある政府、法による行政、司法の独立、政党平等と自由である。だが、この三・四十年間、国会は全面改選さえ行われず、さらに戒厳令が長期にわたった継続し、動員時期臨時条項によって憲法は骨抜きにされ、立憲主義原則は完全に捻じ曲げられてしまっている(このうち、国会全面改選は1992年末に実現し、それ以前に戒厳令も解除された。とはいえ、「臨時条項」は「憲法増加修正条文」として憲法に組み込まれる形になったため、政治権力構造はさらに混乱し、立憲主義原則の歪曲化は、是正されるにいたっていない)。そこで、われわれは改めて次のことを強調したい。
1. 人の尊厳と基本的人権を擁護する
人は国家及び社会制度の中心的存在である。人は国家及び社会制度のために存在するのではなく、国家及び社会制度が人のために存在するのである。立法・司法・行政機関・法律・経済、その他あらゆる社会制度は、人の尊厳及び基本的人権を擁護するための手段である。人の尊厳及び基本的人権は憲法による保障を受けており、任意に法律を制定してそれを剥奪したり制限したりすることはできない。思想・信仰・学術の自由についても、いかなる法律によってこれを制限することはできない。言論・出版・集会・結社の自由を法律で制限する場合は、その方法と目的において「比例原則」に従い、必要となる範囲を超えてはならない。
2. 国民主権原則の確立
人民は、国家のあらゆる権力の源泉である。各レベルの議会は、時間的な制限付きで権限を委任されたものであり、定期的に全面改選されなければならない。議会が法律を制定、あるいは政策を決定する際には、民意に従わなければならず、法律と政策の制定および執行は、合法性と正当性の原則に合致しなければならない。そうでなければ、人民は抵抗する自然権を所有する。政府は人民に対し責任を負い、人民は政府を監督し、交代させる権利を有している。政府の形態、および将来の政治的方向性について、人民はそれを決定する権利を有しているのである。
3. 権力分立とチェック・アンド・バランスの確立
各レベルの公権力機関は、それぞれが分立し、相互に水平な存在としてチェック・アンド・バランスが働くようにしなければならない。また、中央と地方の間には、権限の分立と相互に垂直的にチェック・アンド・バランスが働くようにしなければならない。それによって、地方の自治体制が確保されるのである。
4. 健全な政党政治
政党間の協力によって、国民の政治的意思を形成していくことは、憲政構造において欠かせない部分である。政党政治は、政党の自由、政党の平等及び党内民主主義の原則を守らなければならない。
5. 集会・結社の自由と、自発的な運動への評価
多様化した社会では、集会・結社は人民の基本的な権利であり、政府がそれを侵すことはできない。人民が自発的に組織や運動を起こすことを奨励し、民意との意思疎通を図ることは、国家権力の運用に由来する不当行為や不作為、もしくは資本家による独占、及び官僚と資本の癒着によって、社会にもたらされる弊害を軽減させることにつながる。
6. 新聞の自由の保障
新聞・雑誌などのマスコミは、十分な情報を提供するとともに、多様な民意を反映するなど、公器としての責務を果たすべきである。新聞・テレビ・ラジオは特定党派が所有してはならず、特定メディアによる寡占も避けなければならない。また、マスコミの職員たちは、権力からの独立性は、法律によって明確に保障されなければならない。
7. 法律による正義の追求と実現
法治国家は憲法を確実に遵守し、法律の序列を尊重し、実質的な正義を実現すべきである。立法においては、正義の理念に照らしつつ、社会の発展に沿って、改めるべきものは改めなければならない。司法は、党派を超越し、あくまでも法によって独立した審判を行わなければならない。
8. 中立的で責任感のある行政官僚制度の確立
政府の機能が拡大し、行政部門の権力が膨張するにつれ、行政官僚組織は、その他の部門から厳格に監督を受けなければならないが、そればかりでなく、さらに政治的中立性を担保するための制度と行動倫理を確立しなければならない。それは官僚組織を政党による支配の道具にされるのを避けるためである。
9. 国家緊急権に対する監督
国家緊急権は、憲法体制を破壊してはならない。緊急事態の開始と終了、および緊急権の行使は、国会による厳格な監督を受けなければならない。国家緊急事態の下、行政権力が拡大されると、人権侵害が起こりうる虞があるので、そのために国民の抵抗権を認めなければならない。
(三) 経済と財政の成長を均衡
交通や通信が日ましに発達するとともに、グローバル経済システムが形成されつつある今日、適切な経済成長を確保することは、どの国家にとっての不可欠な条件になっているうえ、一国だけの孤立した状態で繁栄を維持することも不可能になっている。特に、台湾は島国経済であり、国際経済社会の一員として、国際的な経済発展の下に、経済成長を追求するとともに、独自の政策により、国際経済から受ける衝撃を回避しなければならない。同時に、経済成長の成果は、所得の再分配を目的とする資産税課税によって全国民にも享有されなければならない。それによって長期的で安定的な成長と繁栄を確保することができるのである。従って、われわれは以下のことを主張する。
1. 私有財産の尊重
個人にとって充分な投資の成果を確保することによって、生産力を向上させ、経済の成長を促進する。また、政府による指導は消極的に行うだけでよいが、民間の投資環境整備については積極的に行い、私有財産を積極的に保障する必要がある。
2. 安定した経済成長の維持
台湾は島国経済が海外のマーケットの盛衰によって受ける影響を低減するため、国際的産業構造の変化に対応する必要がある。それには、先見性のある産業発展政策を立案し、企業の利益拡大の機会を増加させ、経済の安定成長を確保する必要がある。
3. 充分な就業機会の増進
労働力は最も重要な生産資源である。失業によって、個人の尊厳が損なわれたり、個人の生存の機会が奪われたり、国家にとって有用な資源が浪費されることがないよう、教育や技能訓練によって、国民の技能を上昇させるとともに、産業を発展させて、就業機会を創造すべきである。
4. 中小企業の支援
起業の自由は、基本的な経済的な人権であることを承認する。また、中小企業こそが台湾の経済発展の主たる原動力であったことを評価したい。産業構造の発展に合わせて、中小企業の支援を強化すべきである。
5. 地域均衡発展の確保
偏った産業発展政策を是正する。それには、地域間の所得格差をもたらし、社会・経済問題の根源になっている、都市への人口集中を緩和しなければならない。また、各地域における資源分配状態について、生活圏に応じて産業発展政策を立案するとともに、台湾原住民保留区を新たに策定し、原住民族の生存空間を保障しなければならない。
6. 生態環境の保護
生態環境を破壊するこれまでの経済至上主義を見直し、生態系の保全及び生活の質を優先させる原則を確立する。天然資源の採集とその利用、化学製品の生産とその使用、原発への投資などに関連する政策については、事前に厳格なアセスメントを実施しなければならない。
7. 公営事業の民営化
政治献金や市場の独占を防止し、経営効率を高めるために、公営事業を民営化する原則を確立しなければならない。ただし、独占・寡占事業のうち短期間では民営化が困難な一部の公共事業については、その事業内容を見直すとともに、議会による厳格な監督を受けるようにするべきである。
8. 農漁業資源の開発
農漁業が台湾経済に対して貢献してきたことを高く評価する。農漁業が商工業に比べて不利な条件に注目したい。それには禁止されている海岸線利用や山地開墾を解禁するなどして、農業と漁業の活動領域を拡大しなければならない。また、漁民が海上において作業する場合の安全を確保し、そのために必要となる施設や技能訓練を充実させる。さらに、流通制度を改善し、農漁民の所得を増加させる。
9. 財政、税制、金融制度の健全化
社会正義に適合する財産税制度を制定し、国民所得の格差を縮小する。また、汚職や資源浪費を根絶し、国民の課税負担を軽減する。秩序ある金融制度を確立することによって、企業の資金調達のあり方と、民間の貯蓄収益を改善する。
(四) 社会福祉の公平化・開放
転換期にあたって社会が大きな衝撃を受けていることに対して、政府が何の力も発揮できない現在、台湾の社会構造とその機能は大きな曲がり角に直面している。現代社会が生存・発展していくために必要とされる、さまざまな社会制度が、台湾ではいまだに健全な形で確立されていない。こうして現代社会への適応能力が低下しているために、社会倫理の逸脱、安心感や社会的な連帯感の喪失などの結果を招いており、こうした問題を是非とも解決しなければならない。よって、われわれは以下のことを主張する。
1. 公平で安定した社会システムの確立
すべての人民は、社会で生まれた成果の公平な分配を受け、社会的資源を共有することができる。社会的な搾取や人道に悖る労働条件を強制されてはならない。また、われわれは、連帯の精神と充実した労働環境の下で、自己の発展を希求し、人と自然環境、人と人との間に発生する願望や欲望を調整し、外部からの圧迫を受けないようにすべきである。
2. さらに高いレベルの福利国家の追求
政府はその能力とレベルの及ぶ限り、国民一人一人が人間としての基本的な尊厳を維持できるだけ生活条件を満足させることを優先課題とすべきであり、その点では民間組織の力だけに依存してはならない。貧困者・弱者に対しては、人道的な救済をするにとどまらず、積極的に保障し、福利国家の理念を実現するべきである。
3. 国民社会安全制度の実現
保険制度を労働者や軍人・公務員・教員から国民社会保険制度に拡大させること。定年退職保険は、養老年金制度を採用するとともに、一日も早く失業保険を実施すべきである。所得が一定の水準に達しない者、また、社会保険に加入できない貧困層については、貧困層の上限基準を設定し、その基準を下回った者に対しては、公的補助を享受する権利を一律に認めるべきである。さらに、台湾原住民・少数民族・身体障害者・独居弱者といった社会的弱者に対しても、国家は特別な保護を提供すべきである。
4. 労働者保護基準の向上
労働基準法の適用対象を、全ての労働者に拡大しなければならない。柔軟性のある労働時間制度を導入し、育児期間の女性には半休あるいはパートタイム制などの新たな制度を設けるべきである。また、労働賃金ベースは物価指数の変動に応じてその都度調整すべきである。労働者の団結権・団体交渉権・罷業権などはいずれも保障されなければならない。
5. 公営事業における生産民主制の導入
「仕事」は単に個人の生活を満たすものだけではなく、人類の団結・共生を充たし、自己の潜在能力を実現するものでなければならない。生産にまつわる観念を変革し、「協力共有」を生産活動の目的としなければならない。労働と資本およびコミュニティの代表が共同で経営決定に参画する「生産民主制」を推進することは、将来の実現するべき民主主義社会にとってあるべき方向性である。現段階では、公営事業の分野から、職員の企業経営に対する参画を実現すべきである。
6. 人口膨張圧力の解消
人口政策は、人間の質の向上という観点を重視すべきである。出生率を減少させ、規律ある移民政策を策定すべきである。開拓や就業を目的とした海外への移住は、政府の主導もしくは指導の下で行うこととし、長年にわたる無計画で不合理な移民によってもたらされた「歯ブラシ主義」(訳注:歯ブラシ一本でどこにでも行く)の悪習を是正しなければならない。
(五) 進歩的な教育文化の創造
教育・文化は、国民に現代的な認識を造成させるために必要な基盤である。長年にわたる、政治的権威による教育への不当な干渉のため、学校は単なる知識の丸暗記の場と化し、低劣なドグマへの従属を強制する場となってしまった。一般社会も、低俗な消費文化だけが流行として満ち溢れ、質の高い哲学や台湾土着の文化は忘れられている。国民の間には、ステレオタイプで、官僚的で、偏狭な思考様式だけが押し付けられ、現代社会に必要な思考様式、すなわち合理主義的な精神・社会的な連帯意識・正しい歴史認識・高度な文化的素養・現代世界に関する知識といったものが、すべて欠落している。よって、われわれは以下のことを主張する。
1. 開放的な教育システムの確立
学校教育は、段階と系統によって異なるものの、知識技能を伝授し、全人格教育を実施するものである。とりわけ学生が自立的な思考、判断力、自由と民主主義の観念を発展できることに注意を集中しなければならない。この目的を達成するためには、教育予算を大幅に増加するとともに、課程内容を随時更新し、科目内容を充実していくほか、学生それぞれの潜在能力を引き出すため、学生に対して学問を自由に選択できる機会を提供しなければならない。特に政治の学校に対する介入を排除し、学校が教育・研究・社会への貢献などの機能を自由に発展させられるようにしなければならない。また、生涯教育制度を設置し、就学年齢以前の幼児教育、社会教育、成人教育などと、学校教育との連携、融合を実現すべきである。
2. 教育の中立性と学問の自由の保護
教員と学生の教育権を保障し、教育の質を高めなければならない。学生は校内において刊行物の出版や討論会の開催などを自由に行うことができる。大学の教員と学生は、結社の権利と校内自治権を有している。大学及び研究機関の人員を雇用するか雇用を継続しないかは、資格審査委員会を組織してそれによる公平な裁定を下すべきであり、政治権力の干渉を厳しく禁じるべきである。また、相当のキャリア有する優秀な教員に対しては、終身職を保障すべきである。
3. 現代文化と台湾土着文化の両立
文化とは、一定の時代・空間の中で、歴史的に蓄積されることで自然によってはぐくまれてきたものであり、共同体の存在を示す象徴であるとともに、社会ネットワークの基盤でもある。外来文化は融合または同化させるべきであり、政治的な力によって故意に、文化を移植したり抑圧したりすることに反対する。文化工作は、土着の文化に対する愛着を基礎に世界文明を吸収し、斬新で進歩的な文化を形成することを目的としなければならない。
4. 文化的な中身の充実
文化に含まれる思想と知識を向上させ、消費的・娯楽的な文化の氾濫を阻止する。非営利の文化活動を支援し、さまざまな地域・社会と、特定の民間団体に保存されている文化的な特徴の保存に尽力する。国際的文化交流を強化し、都市と農村間の文化活動を均等に発展させる。党派による意図的な介入を排除し、党派の宣伝の道具として利用されないようにしなければならない。
(六) 平和的で自立的な国防・外交
中華人民共和国が国連に加盟して以降、台湾と正式に外交関係を有する国は日増しに減少し、台湾は国際社会の中でますます孤立している。台湾人民が国際社会の活動に参加するという権益も失なわれ、国民が海外旅行や貿易活動を行う際に、大きな不便を強いられる結果となり、さらには、資金の海外流出が進み、台湾の対外的発展には大きな障害が造成されることになった。しかしながら、国民党政府は、依然として全中国を代表するとの立場を主張する一方で、中国大陸に対しては「三不」政策を唱えている。外交的には民間レベルにおける細々とした交流に依存するだけで、すでに自主的な生存能力と発展の将来性が失われている。よって、われわれは以下のことを主張する。
1. 国際関係の発展と回復
平和・互恵・独立・自主の原則に基づき、平和を愛好し、国際正義を尊崇し、自由と民主主義の理念を有し、国民主権と生存権を尊重する国家とともに、人類の平和と進歩のために奮闘していきたいと考える。自主的外交を発展させるためにも、国家の生存能力を高めるべきであり、さらに柔軟で積極的に台湾が現在国際社会において占めている地位の問題を解決すべきである。
2. 国際紛争の平和的解決
非暴力平和主義を重視することは、自らを防衛するという基本的権利を損なうことにはならない。いかなる国家であれ軍事的に他国の国土を占領することにも、武力によって国際政治上紛争になっている分裂国家や政治実体を征服することに反対する。国際的な軍縮対話、軍備の制限、各国が所有する核兵器や生物・化学兵器の廃絶に賛成する。
3. 台湾の前途は台湾のすべての住民により決定すべきこと
「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(国際人権規約A規約)」が掲げる原則によれば、すべての人民は自決権を所有し、政治的地位を自由に決定でき、さらに経済的、社会的および文化的発展を自由に追求することができることになっている。そこで、台湾の前途について、台湾のすべての住民が自由・自主・普遍・公正・平等な方法によって、共同で決定すべきである。いかなる政府あるいは政府の連合体も、台湾の政治的帰属を決定する権利を持たない。
4. 台湾海峡での両岸における対立の終結
台湾人民のすべての利益に基づいて、人道的、平等的、平和的な解決方法を追求する。台湾海峡両岸の政治・社会・経済制度の格差を前提に、まず行うべきことは両岸人民の生活の改善であって、緊張と対立を造成すべきではない。台湾海峡両岸の問題は、すべての住民の自由意志によって自主的に決定すべきであって、国民党と共産党だけが「人民自決の原則」に反する形で話し合いで解決することには絶対反対である。
5. ハイテク化による軍縮政策
兵役期限を短縮する。国防予算の編成と決算などの審査は厳正に執行し、不必要な経費支出を排除し、購入対象は海・空軍の防衛的装備に集中すべきである。また、購入先は分散し、自主生産を強化すべきである。
6. 軍隊の政治的中立化原則の貫徹
人民および文民による軍への統制権を確立する。軍人は政治的中立を保持しなければならず、政党間の争いに介入してはならない。政党組織は軍隊から撤退すべきであり、軍事部門は国会の全面的な監督を受け、国会という最高民意機関に対して責任を負うべきである。
二、 行動綱領
我々が直面している問題に対する具体的主張
一九九九年五月八、九日の第八期第二次全国党員代表大会で改正
(一) 外交
1. 中華人民共和国の台湾に対する武力威嚇に反対する。台湾海峡両岸は対等地位を持ち、理性的な態度をもって共同で永久和平を維持する。
2. 武力による国際紛争の解決を反対する、如何なる政府であれ強権であれ、現地住民の民意を無視して紛争を解決しようとすることにも反対する。
3. 台湾の名義による国連加盟を積極的に勝ち取っていく。国連憲章および国際条約を遵守し、平等・互恵の原則でもって、国際社会に復帰する。
4. 民族差別に反対し、「人権の国際化」原則を確認し、世界各地の人権被害者および人権活動家を支援する。
5. 国際テロリストが、無辜の人民を暴力によって殺傷することに反対する。また、正義にもとづく国際秩序を確立できるよう呼びかける。
6. 極東・太平洋地区の経済発展に対する地域協力を促進し、国際間の文化・科学技術・経済交流を強化する。
7. 民間団体が、国際生態保全、衛生・医療、教育・文化等に関する非政府組織(NGO)に加入することを支援、協力する。
(二) 国防
8. 国防は、武力によって台湾の安全を確保することを原則とする。
9. 生物・化学兵器や核兵器の製造・購入・貯蔵および使用に反対する。
10. 国軍政治作戦制度(注:国民党のイデオロギー教育を実施する制度)を廃止し、政党が軍隊に党組織を設置して政党活動に従事してはならない。
11. 義務兵役期間の短縮をするため、「兵役法」を改正する。大専学生預官考選制度(注:大学生・専門学校生に試験を受ける機会を設け、兵役中の役付けを決める制度)を改革すべきであり、とりわけ在学中に試験を実施してはならない。
12. 軍政(行政による指揮系統)と軍令(軍そのものの命令系統)を一元化し、国防および軍情報機関のトップは、国会による監督を受けなければならない。
13. アジア・太平洋地域の周辺国家と安保情報を交換し、公海航行の自由や国際航路交通の安全等の強化を共同で対処し、南シナ海を国際的に共同使用する海域とする。
14. 専門知識を持った文官を積極的に採用し、台湾全体の防衛に必要なものは何かを評価する作業に参加させ、組織設置と軍備整備事務の企画にも参加させる。それによって、国防資源の浪費につながる自部門・部隊本位主義を回避する。
15. 国防近代化の原則にのっとり、各種防御システムを改善し、積極的な防御と、効果的に威嚇を跳ね返せるような国防政策を確立する。
16. 金馬地域(金島・馬祖両群島)駐留軍を毎年削減していき、その代わりに金馬地域の経済を発展させる。
17. サイバー作戦能力を強化し、台湾海峡の情報戦における優勢を確保する。
(三) 自由人権
18. 法律の前では人は皆平等である。
19. 人身の自由を保障し、何人も不法に逮捕、拘禁、尋問、処罰を受けてはならない。また、拷問は厳禁する。
20. 人民の表現の自由を保障する。政府は如何なる形であれ言論検査制度を設けてはならない。
21. 人民団体の設立は登録制(注:日本でいう準則主義か)を採用し、人民の結社の自由を保証する。
22. 人民が秘密に通信する自由を保障する。郵便・電話の統制、抜き取り、検閲、違法な盗聴を禁止する。
23. 人民の住居移転の自由を保障する。生態環境の保護を目的とするほかは、山地や海岸線への立ち入り禁止措置を行ってはならない(注:戦後台湾では、国民党が軍事目的で、山地や海岸線の管制を行ってきた)。
24. 思想と信仰の自由を保障し、異なる思想・信仰を持つものへの迫害を厳禁する。
25. 刑事犯の人格尊厳を尊重し、刑事犯に対しては、それが受けるべき懲罰以上の暴行を加えてはならない。
26. 生命を尊重し、冤罪を防止し、死刑廃止の可能性を検討する。
27. 政治犯とその家族に対する一切の差別や迫害を禁止する。また関連法令を改正し、政治犯の参政権および勤労権を保障する。
28. 刑事訴訟法規を改定し、陪審制度を設立する。内乱・外患罪に関連する事案については、各党代表・国会代表および有識者で構成される陪審団を組織して、公開による裁判を行うべきである。
(四) 政治
29. 如何なる形式であれ、一党独裁と強権専制に反対する。暴力的な革命手段による政治闘争は行わず、各国とは和平共存を進め、公平な競争を維持し、世界の安定および繁栄のために共同で努力するべきである。
30. 政党は公的資産を私有化してはならず、また投資または営利事業を経営してはならない。政党が特権あるいは不当な手段で取得した財産は、国家の所有に返還されなければならない。
31. 政党は軍、警察、情報局、学校から撤退すべきである。
32. 暴力団および金権勢力が政治運営に介入することに反対し、選挙における不正行為は厳しく防止されるべきである 。
33. 訓政時期(注:国民党が政治発展段階を軍政、訓政、憲政にわけたうちの第二段階で、国民党が独裁政党としてすべての人民や団体を訓令・指導する体制をいう)に発布された「国家総動員法」を廃止し、不正常な戦時管制を解除する。
34. 自由選挙・公営選挙・比例代表選挙などを考慮して、選挙罷免法を改正する。
35. 県市政府に完全な人事権、立法権、組織権および財務・税務権を与え、地方自治を実現する。
36. 蒙藏(モンゴル・チベット)委員会を排除する。
37. 台湾原住民族自治区を設置し、政治、経済、文化等の自主権を保障し、厳重民族の権益を立法的に保障する。
38. 人民の私有財産を保障し、政府は公共利益の目的で、人民の財産を強制的に収用してはならない。また収用された場合は、合理的な補償を与えるべきである。
39. 汚職を徹底的に除去し、特権を消滅させる。公務員は私的な事業を所有してはならない。公務員の財産登記制度を設ける。
40. 公職人は、政府系法人の代表以外の公営事業および投資事業の職務を兼任してはならない。
41. 公務員および教員は行政の中立を保つべきであり、その職権を利用して党派の争いに介入することを厳禁する。
42. 公務員の行政効率を向上させるため、余剰人員のリストラを実施する。人材登用においては、党派や戸籍(つまり省籍)による制限を受けてはならない。
43. 軍事情報局は、国内において本国民に対し情報活動を行ってはならない。
44. 軍事情報局と調査局の活動および運営は、国会の監督を受けなければならない。
45. 法官は独立した審判を行い、金銭、権力、色情の影響を受けてはならない。
46. 司法官の清廉潔白は厳格に要求され、司法の風紀を正さなければならない。
47. 警察の綱紀を粛正し、法を枉げたり、汚職を行ったり、暴力団と関係を持ったりした者は、一律に厳罰に処する。
48. 二二八事件の真相を解明し、台湾二二八烈士館を建設する。
49. 台湾省廃止の主張を貫徹させ、行政効率を向上させる。
50. 郷(鎭、市)レベルの選挙を停止し、郷(鎭、市)長を県長が法の委任にもとづいて任命する方式に切り替える。
(五) 経済
51. 産業のレベルアップを促進し、低汚染・省エネルギー・高付加価値産業を奨励し、台湾を緑の(環境に配慮した)ハイテク・アイランドとして発展させる。
52. 金融市場のルールを確立させ、特権的なローンを禁止し、インサイダー取引および不正な取引や株の保有を厳格に取り締まる。
53. 外貨の運用および管理は、国会による厳格な監督を受けなければならない。
54. 中央銀行の運営の独立性を確立し、安定したマクロ経済環境を造成する。
55. 政府、産業界および労働界が定期的に対話する機会を設けることで、台湾の産業発展の方向と戦略を確立する。
56. 独占や官・産の癒着を禁じ、市場が合理的に運営されることを確保する。
57. 製造・販売一体体制を奨励し、中間搾取を回避する。
58. 政府は、生産に関わる活動への介入を極力避けるべきであり、公営事業の民営化にあたっては、財閥や政党に隷属することがないようにし、国民の権益を守るべきである。
59. 民営形態ではあるが、独占あるいは寡占的な性格が強い公益的な事業は、製品・労務の賃金・品質に関して、民意機関による審議と監督を受けるべきである。
60. 煙草・酒類の専売制度を廃止する。
61. 外国人投資事業で、国家安保に抵触するものや独占的な性格を持つものは投資を制限しなければならない。
62. 徴税効率を向上させ、高所得者の脱税を防止する。
63. 租税制度を改革し、所得再分配の役割を強化し、個別の国民あるいは企業が、その職業・地位・経営事業を理由に、徴税上の差別待遇を受けることがあってはない。
64. 原子力発電設備の新設に反対し、代替電源の開発に積極的に努める。現有原子力発電所については閉鎖期限を決定する。
65. 現有原子力発電所の安全・管理を強化し、原子力発電所職員の質を向上させ、核廃棄物を蘭嶼島から撤去する。
66. 食物、薬物、商品に対する検査を強化し、最新の情報に基づいて安全標準をそのつど見直し、消費者の安全を確保する。
67. 生態環境を維持し、工場に関する安全規則を厳格に適用し、作業場の安全を改善し、工業災害を減少させる。
68. 安全かつ快適な生活環境を享受することは、人民の基本的権利である。
69. 個人・産業界が、廃棄物の発生そのものを削減したり、廃棄物を回収・再利用することを奨励する。また、廃棄物の不法投棄を禁止し、生態環境への悪影響を低減させる。
(六) 社会
70. 中央省庁と同格の社会福祉主管官庁を設立し、全国的な社会福祉事務を執行させる。地方自治体の社会福祉関連行政機構を完備し、地域事情に合致する社会福祉事業を推進する。
71. 完全な社会保険・社会的年金・社会的救済制度を整備し、人民の最低限の生活条件を保障する。
72. 国民健康保険制度を完備させる。国民とって有益な健康検査制度と質の高い医療環境を提供する。また、国民の健康管理と医療環境を地域コミュニティごとに整備する。
73. 国民年金制度を実施し、現状では職業別に行われている定年退職後高齢者保険制度を完備し、公平かつ所得再配分の効果を持つ国民年金を提供し、老後の経済的安定性を保障する。
74. 老人および心身障害者に対する長期的な看護制度を確立し、長期的看護保険を推進し、コミュニティごとに長期保護システムが提供されるようにする。
75. 心身障害者の教育・就業・経済的安定性を保障し、社会参加の機会を充分に提供し、バリアフリーの生活環境を完備する。
76. 比較的低所得の国民に賃貸するための国民住宅を建設する。これによって住宅価格を抑え、国民の居住の権利を保障する。
77. 両性平等政策を推進し、女性の参政権と勤労権とその身体の安全を保障する。
78. 児童・少年の生存権を保障し、公立託児所を増設し、質の高い保育サービスを提供する。児童・少年保護ネットワークを設置して、児童・少年への虐待を防止する。
79. 貧富の差を縮小するために、就業サービス制度や所得再配分制度を活用して、低所得家庭の収入を向上させる。また、低所得家庭には適切な社会的救済制度を提供する。
80. 都市と農村の資源配分の不均衡を改善する。国家は貧困地区および開発が遅れている地区の公共建設に対してより多くの資源投入を行うべきである。
81. 国土の永続的利用の原則を確立し、土地投機を抑制し、土地収用に伴う補償金給付過程を透明化させる。
82. 長期的な視点に立った住宅政策を推進し、住宅市場の取引メカニズムを確立し、住宅価格を合理化することによって、国民の居住の権利と居住環境の質を保障する。
83. 政府の現有国土計画および管理責任部署のレベルを引き上げ、国土計画と国土発展事務を推進する。
(七) 労働
84. 労働保護基準を引き上げ、労働者の労働条件と労働安全環境を改善する。また労働者の団結権、争議権、団体交渉権を保障する。
85. 公営事業は率先して労働者の経営参加制度を実施し、労働者が意思決定や運営に参加する権利を保障する。
86. 国民就業補助機関の役割を強化し、全国就業情報ネットワークを設置し、就業および転職の訓練教育を強化することによって、就業機会を増やし、労働生産力を向上させる。
87. 失業保険を完備し、失業期間中の基本的生活を保障する。
88. 女性の労働参与率を向上させ、女性の勤労権を保障する。また育児休暇やフレックスタイム制度を実施し、性別、婚姻、妊娠、出産によって如何なる差別を受けることがないようにする。
89. 労働組合の連合組織(訳注:ナショナルセンターなど)を多様化し、公務員・教職員の労働組合設立を自由化する。企業の雇用主には労働組合と団体交渉する義務があることを規範として確立する。
90. 台湾の労働者が公平かつ合理的な賃金を獲得することを保障し、本人および家族が尊厳のある生活を維持できるようにすべきである。
91. 労働によって生み出される価値が同等な者は、性別に関係なく、同一賃金を受けるべきであり、ブルーカラーとホワイトカラーは等しく尊重されるべきである。
92. 労働部(労働省)を設立し、全国の労働行政を担当させる。
93. 中国籍労働者の導入に反対し、外国籍労働者の人数を年々減らしていくべきである。また、労働許可証を有する外国籍労働者の人権を保障されなければならない。
(八) 農林水産
94. 農業・林業・漁業・酪農業の生産・販売協力体制を奨励する。
95. 農業情報ネットワークを強化し、供給と需要のミスマッチを予防する。
96. 農漁会(農協・漁協)を整備し、いかなる党派による干渉を排除する。
97. 農作物天然災害保険を開設する。
98. 農村建設のため長期低利貸付を行い、農民生活環境の改善を奨励する。
99. 国家の軍・警察は、漁民の海上作業の安全を保護すべきである。
100. 浅海における海洋汚染を防止し、沿海養殖漁業に助言を与える。
101. 近海および遠洋漁業を発展させ、海底牧場を経営する。
102. 造林・保林を強化し、濫りに開墾・伐採することを厳禁する。
103. 工商業者がさまざまな手段を弄して酪農奨励金を不当に獲得しようとすることは厳禁しなければならない。農民が安心して酪農業に従事できるよう保障する。
(九) 教育
104. 学術研究および創作の自由を確立し、大学の自治を保護する。
105. 義務教育の課程制度および教科書は多様化されるべきである。それによって自由で独立した思考能力を育てることができるからである。
106. 教育予算の下限に関する憲法の規定を復活させ、国民の義務教育のための予算を充実させ、高等教育予算の合理的配分を実現するため「大学経費配分委員会」を設立する。
107. 国家の教育目標と範囲に反しない限り、各種私立学校を設立する権利と課程内容を決める権利は保障されるべきである。
108. 軍事訓練教官は学校から退出させ、軍事訓練制度を廃止し、政党や外部団体の学校に対する干渉を禁止する。
109. 国民義務教育を十二年間に延長し、国民が経済要因に影響されず、高等教育を受ける権利を確立する。
110. 大学・専門学校統一入試制度を改革し、三民主義の試験を廃止する。
111. 「小班小校(小さな学級、小さな学校)」制度を推進する。
112. 中・低所得家庭、原住民族、心身障害者には、学生奨学金を提供する。
113. 私立学校が私腹を肥やすことを厳禁し、私立学校の教師や職員の地位を保障し、成績優良な私立学校を褒賞する。
114. 開発が遅れている地区に対して優先的に教育施設改善のための補助金を支給し、教育の均衡発展を追求する。
115. コミュニティおよび保護者団体が国民義務教育の校務発展に関する意思決定に参加する権利を立法により保障する。
116. 国家は、国民が生涯学習を受ける権利を保障すべきである。
(十) 文化
117. 文化資産を保護し、多様な文化の発展を奨励する。
118. 国民義務教育は単一言語によって授業を行うべきではなく、各エスニックグループの言語を尊重すべきである。また、母語教育を推進する。
119. 教育の内容は、各エスニックグループやコミュニティに特有の生活方式を尊重したものでなければならない。また、異なるエスニックグループやコミュニティどうしで生活の経験を共有すべきである。
120. コミュニティに運動のための場所や施設を充実させ、体育を発展させる。
121. 各レベルの政府の文化発展基金は、郷土芸術創作活動に優先的に支給されなければならない。
122. テレビ局および放送局の電波は全国民が所有するものであって、特定の政党が電波を保有することに反対する。
123. 原住民族固有の文化、言語、宗教を尊重し、それらの発展を支援する。
綱領
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