2013年6月13日木曜日

新世紀の新しいパートナーシップ:台米関係の強化




 民進党の蘇貞昌主席は13日、アメリカ2大シンクタンクであるブルッキングス研究所及び戦略国際問題研究所(CSIS)が合同で開催した座談会に出席し、「新世紀の新しいパートナーシップ:台米関係の強化」と題した講演を行った。内容は以下の通りである。


 クリス、ご紹介ありがとうございます。リチャード、講演のお招きに感謝いたします。
  ご来賓の皆様、おはようございます。ブルッキングス研究所と戦略国際問題研究所がこのたびこの講演会を開催し、私にお話しする機会を与えて下さったことに感謝いたします。

私のアメリカ経験

 数日前、私の乗った飛行機がレーガンナショナル空港に近づき、私は修理中のワシントン記念塔を目にしました。その時心に浮かんだのは、1983年、李潔明大使の手配により、アメリカの招待に応えて初めてワシントンを訪問した時のことです。そのとき私は、この記念塔の背後にある歴史的意義に深く感動したことを覚えています。
 200年以上も、アメリカの民主主義は戦争とその他の挑戦を切り抜けてきました。ワシントン記念塔がゆるぎなく聳え立つように、アメリカの民主主義も一層強固なものへと成長していきました。台湾の民主化も、同じようであると思います。

 台湾の民主

 私は台湾最南部の屏東の出身で、勉学に打ちこみ、弁護士の資格を取りました。恵まれた暮らしが可能でありましたが、1979年台湾で発生した反体制運動-美麗島事件の後、私は国民党政権によって捕らわれた被告人の弁護士を務めることを決めました。1986年、私は他の17人の同志と共同で台湾初の反対政党-民主進歩党を結党しました。政治迫害の過程で、台湾の民主化の発展を推進してきました。

 この26年間、民進党は国民党一党独裁と闘い、国会改選、総統の直接選挙を促し、2000年に政権交代を実現させました。この間私は、屏東の民意代表として県長を務め、その後北上し、台北県-今の新北県長を務め、後に行政院長(首相に相当)に就任しました。そして同時に、民進党結党メンバーから2度の党主席の職務に就いて参りました。
 

 アメリカの皆さんは早くから既に民主的な生活様式に慣れており、民主主義を当然のものとさえ思われていることでしょう。しかし、多くの台湾人は生命の危険を犯し、快適な生活を放棄して、民主主義の扉を少しずつ開いてきたのです。アメリカの友人達の協力のお蔭もあり、台湾の民主主義が実現してきました。私は自分自身が幸運であり誇りに思うことは、台湾の民主主義を目撃してきただけでなく、この歴史の過程に自らが関与してきたということです。私は台湾人が持つ全てを大切に思うとともに、台湾の民主を守るために全力を尽くしていくつもりです。 

 今日は、この機会を利用して、皆様に幾つかの重大な問題に対する民進党の考え方-台湾の民主主義を深化させる取り組み、どのように両岸関係に対応するか、どのように台米関係を強化させるか、ということについて、三つの「R」-責任(Responsibility)、和解(Reconciliation)及びリバランス (Rebalance)を用いて、私の考え方を述べていきます。

 民進党は責任感のある、執政能力を備えた政党である

 私が民進党主席に任命されてからのこの1年来、私は民進党が単なる野党とならないよう努力してきました。責任感があり、有効的な代替案を提出することができ、国民党政権よりも執政能力のある政党となるよう励んできました。

 台湾経済は昨年最悪の状態になり、民進党は経済成長を刺激する政策プランを提出してきました。また年初には、破綻寸前の年金改革の討論を牽引してきました。

 私たちは、教授や学生の側に立って、報道の自由を確保するため、共同で台湾のメディア寡占に反対してきました。そして、嬉しいことにそれが成功しました。目下民進党は次の闘いに臨んでいるところです。それは、政府に第四原発の建設停止を求めているところであり、他の政策においても、民進党は政策の提案に万全の準備をしています。

 これらの努力の目標は、民進党に来年年末の台湾地方選挙で勝利をもたらすことであり、2016年の民進党の政権復帰に道筋をつけることです。私は、台湾人と国際社会が、責任感があり執政能力のある民進党を歓迎してくれることと信じています。

 昨夜私はキャピトルヒルで、下院外交事務委員会主席で友人のエドルイスと話をしました。我々は、今年の初めに彼が台湾を訪れた際、5名のアメリカ人議員とともに、台湾新幹線に乗ったことを思い返し、ルイス主席は、時速185マイル下での会話を永遠に忘れないだろう、と話してくれました。

 台湾の新幹線は、民進党政権期に工事が始まり、私が行政院長を務めていた際に完成し、私たちは国民に民進党の執政能力を示すことができました。地方の民進党の県市長も高い評価を得ており、台湾人は、他の党と比較すれば、間違いなく我々が最良の選択だということが分かるはずです。


 中国政策と台湾コンセンサス

 皆さんは民進党がどのように台湾と中国との関係を進めていくか、ということに非常に関心をもっておられます。これまでの歴史は全て真実であり、民進党は更なる努力で国際社会から再び信用を得る努力を続けるしかありません。民進党主席として、この責任から目を背けるわけにはいきません。私は国内の和解を通じて両岸関係を正常化させることを主張しています。

 少し前、リチャードが私に彼の最新作「未知の海峡」を贈ってくれました。私は彼の主張した2つの意見に非常に同意しています。それはつまり、アメリカは台湾を放棄するべきではないということと、台湾と中国の関係ではバランスを維持するべきである、ということです。
 リチャードと私たちの考え方は同じです。つまり両岸関係は5年の交流を経た後で、この安定した付き合いを維持してきた力は、次第に緩やかとなり、停滞するようになるということです。これによって、台湾もアメリカも両岸関係をより現実的に考える必要があるということです。

 昨今アジア太平洋地区で発生した政治的な変化から我々が学んだことは、台湾と民進党は、この地域において変わりつつある情勢も、将来の対中政策に考慮していかなくてはならないということです。国内政治や選挙のための政治から思考してはいけないということです。

 私は常に確実に物事を進める人間です。私の過去の成果を見れば、20062007年に台湾行政院長の際、マカオとの協議で両岸チャーター便を達成させ、2008年の後の両岸第一協議の基礎となりました。

 去年私が党主席に立候補した際、当選後に中国事務委員会を成立させることを約束し、5ヶ月間に渡る協議と準備を経て、59日に第一回の委員会会議を開催しました。そして、「台湾の中国アジェンダ」を提出したのです。我々は、政治、安全、社会、経済の四大局面から、深く、包括的に高度な戦略をもって民進党の中国政策を計画しています。

 過去民進党の中国政策の議論や決定は選挙の影響を受けることが多く、結果、国内外の人々が十分に民進党の政策を理解することができませんでした。我々の基本的な立場は変わっておらず、台湾の人々の主流な民意と合致しているものでしたが、誤解やギャップが生じてしまいました。我々は、民進党が政権に復帰するならば、この点を克服しなくてはいけないと考えています。

 ここで改めて、民進党の中国政策の核心的価値について申し上げます。台湾は一つの主権独立国家です。国名は中華民国です。これが台湾海峡の現状であり、如何なる現状変更の試みも、台湾人の国民投票と民主の制度によって決定されなくてはなりません。これが「民主過程の決定原則」です。この主張は私が3年前に提案した「台湾コンセンサス」であり、民進党が1999年に採択した「台湾前途決議文」にもはっきりと示されています。

 その一方で、民進党は中国の台頭について、積極的に自信を持って対峙するべきだと考えています。中国との交流は、中国政府との対話だけでなく、庶民社会との交流も期待するものです。過去の長い間、民進党員は中国と交流と対話を進めてきました。中国も民進党との交流を通じて、台湾人の考え方を全般的に理解できると考えるようになってきています。交流が盛んなるということは、相互理解が深まり、誤解も少なくなるということです。これが、中国政府の民進党に対する不信感を減少させることに役立つのであり、将来民進党が政権に復帰した際に、台湾に対する誤解や誤った判断をなくすことに繋がるのです。

 これは民進党の対中政策の戦略思考の第一歩に過ぎず、我々が中国事務委員会での討論を通じて、党内部の対中政策の立場、戦略、政策を強化したあとには、続いて台湾国内の両岸関係コンセンサスをまとめていきます。こうした準備は、将来中国政府との関係正常化の基礎となっていくのです。

 両岸の間には所謂「魔法の方程式」のような、全ての違いを解決できるものは存在しません。現段階で両岸の政治発展と軍事バランスには大きな差があります。両岸関係の改善はステップバイステップで、努力が必要です。「魔法の方程式」に頼ってはならず、党内、国内と両岸の3つの側面から全面的に、慎重に、かつ万全なコンセンサスを得る過程が必要です。

 台米関係の「リバランス(再均衡)」

 台湾人と民進党は、アメリカとの関係は外交関係において最も重要だと考えています。過去がどのようであれ、民進党は前を向いて走っていきます。対米外交を強化させるため、民進党は駐米代表処の復活を決めました。

 アメリカは台湾の重要な「民主パートナー」であり、安全、経済のパートナーでもあります。私は昨日キャピトルヒルで、下院上院議員と面会した際、民進党と台湾人を代表し、改めて、アメリカの国会で「台湾関係法」が制定されたことに対し、心からの感謝の気持ちを表明しました。

 民主と安全は決して空から降ってくるものではありません。代価を払って得るものです。過去数年来、両岸の軍事は厳重なまでにバランスを崩し、台湾の国防投資は日に日に減少しています。現在私たちは自己防衛について真剣に考えなければならない時に来ています。過去私が行政院長だった時の記録を見返すと、2007年の国防予算は国民所得の2.7%を目標としており、2008年は3%の約束を取り付けていました。

 これは皆様にお見せする、民進党の最新の国防政策白書です。民進党は野党ですが、私たちは台湾の国防に真剣な態度で臨んでいます。私は皆さまに、将来の民進党は、台湾の自己防衛に責任を持つことを保証します。私は、アメリカに対し、台湾に何をしてくれるかを求めませんが、台湾が自己努力してアメリカの協力を得られるようにしていきます。

 貿易政策上でも、民進党は自由解放的な貿易政策を支持しています。台湾の過度な中国に対する市場開放を心配しており、我々は他の国家との自由貿易協議を支持しています。

 民進党はオバマ政権のアジアでのリバランス(再均衡)政策を支持しています。なぜならこれは、アジア太平洋の平和と繁栄にとって重要な柱であるからです。台湾の戦略的経済的利益から言うと、台湾を「リバランス」の一員に入れるべきです。積極的にアメリカと自由貿易協定(FTAs)を結び、環太平洋パートナーシップ(TPP)への参加を求めていきます。FTAsとTPPはともに台湾経済生存と繁栄の道なのです。

 民進党は現政権が、構造改革や産業科学能力の強化、企業の国際化への協力などを進めるよう促していきます。我々は政府に対し、各産業の必要な変化に対して、必要とされる予算を調整するよう促していきます。

 この機会に再度、アメリカの皆さんには、中国と交流する際に、台湾との関係を同時に「リバランス」すること、安全強化や貿易関係で台湾に協力して下さることをお願いします。

 皆様、民進党はこれまで台湾人の期待と支持を得て、二度政権をとりました。これからも再度台湾の人々から信任を得るよう、また国際社会からも信頼と支持を得るよう一層の努力をいたします。

 責任、和解、リバランスが私の原則です。


 民進党は責任ある政党として、これまでも、これからも、台湾の人々のために明確な政策を提示していきます。

 民進党は国内の和解と両岸関係の正常化を促進します。

 民進党はこれまで述べた努力の過程において、責任あるメンバーとなり、台湾の長所をもって民主と繁栄のアジアを創造していきます。

 皆さまありがとうございました。

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