2013年6月14日金曜日

蘇主席ブルッキングス研究院講演会後の学者専門家との一問一答全文


民進党の蘇貞昌主席は13日アメリカの2大シンクタンクであるブルッキングス研究所と戦略国際研究センターが合同で主催した座談会に出席して講演をおこなった。アメリカ副大統領オフィス、国務院、国防部、財政部、日本大使館、中国大使館、フィリピン大使館などから派遣された職員が参加したほか、多くの重要なシンクタンク、CNASRANDStinson CenterHeritageAEIなどの学者と専門家が会場に駆けつけた。蘇主席は講演終了後、専門家や学者、メディアの質問に答えた。内容は以下の通り。

質問一.Stinson Center東アジア計画主任の質問:前回の選挙で、民進党の両岸関係の立場は1999年の台湾前途決議文であり、中国と正常な関係を発展させることを排除しなかった。あなたはこの考えを支持しているようだが、前回の選挙の際、中国は、たとえ将来民進党が再度政権をとったとしても、この考え方では交流を進めるのに十分ではない、と考えていた。中国が考え方を支持しないなら、なぜあなたはこの民進党の立場を今後中国が受け入れられると思うのか?

蘇主席回答:私が先ほどの講演会で話した通り、民進党の核心的価値は1999年の台湾前途決議文で、これを我々が放棄することはない。これは大多数の台湾人の共通認識である。台湾は主権独立国家であり、これは事実である。
 
我々は開放的な態度であり、善意をもって中国と交流していく。しかし中国が台湾は主権を放棄するべきで、台湾は中国の一部であると台湾に認めさせようとするなら、これは中国の要求であって我々は受け入れることはできない。ただ、例えこのような情勢であっても、私が行政院長だったと時に、実際に台湾は中国と交流があり、チャーター便の実現などを行っていた。我々は中国がこういう事実を認識して欲しいし、台湾が中国の一部分であると認めなければだめだと、常に台湾を強制するのをやめるべきと考えている。これは現状とかみ合っていないことだからだ。現段階の状況は、台湾は中国の一部ではなく、中国に現状を変えないよう求めるし、我々も現状を変えない。我々は中国を挑発しないし、中国も我々を困らせないで欲しい。そうすれば我々は良き隣人となり、仲良くできるのであり、互いにとっても良い事であろう。
 
中国は多忙である。両岸人民は現在多くの交流や貿易の往来があり、我々は中国とどのような売買も出来るが、主権は売ることはできない。我々は善意をもって中国と交流しようと思っている。中国は大国であり、度量を広く、寛大な態度をとるべきで、中国はこの地域の平和を保つのが自分たちの責任であることを知っているはずだ。台湾はこれからも善意を示していけるのであり、中国に台湾を窮地に立たせるようなことをしないよう希望する。絶対多数の台湾の民意をそむくことをせず、中国が多くの台湾住民の民意と国際社会の期待に応えていくことを信じている。

質問二:国会研究センター Shirley Kanの質問:中国の軍事脅威に対して、民進党の国防白書で主張している国防政策は、中国のこのような軍事的脅威のみを想定してのものか?それとも重要な目的は、中国の軍事脅威を阻止して、台湾の自己防衛能力を強化することか?

蘇主席回答:台湾が自衛防衛能力を持つことは当たり前のことであり、どの国家も必ず国防が必要である。台湾の国防は国家主権と国民の安全、人々の幸せを追求する機会や国家の価値を守るのに最も必要なものだ。
 
国防予算は台湾にとって重い負担である。馬総統は選挙時に、国防予算を3%まで増やすと約束したが、現在はたった2.1%である。これは民進党の最初の執政当初よりもかなり少ない数字であり、これが難しいことであるとわかる。しかし、台湾が巨額の経費を自己防衛に投資するのは中国に対してではなく、中国が台湾を対象にしているからで、やむを得ないことである。我々がいくら兵器を購入しても、中国には勝てないし、中国と闘おうという気もない。我々はどこかの国が台湾を併合したり侵略したりしようとするときに初めて、代価を払うのである。これは我々の最後の決心で、最大の決心なのである。
 
我々はどのような人をも対象にしていない。我々は生存の機会と、我々の最低限の価値を維持するだけである。私は、アメリカが台湾関係法の第二条第二項に基づいて、30年来台湾に防衛兵器を提供してくれていることに感謝する。我々は共同の価値を持つ民主国家として、アメリカに、引き続き台湾に自己防衛の機会と能力を与えてくれることを期待している。 

同時に、今年2月に日本を訪問した際、日本野党の政治リーダー、シンクタンク及び学者専門家と意見を交換した。日本側はこの地域の安定が破壊されることを非常に心配している。過去東アジア地域が世界の他の地域と比較した際に、平和で安定しているのは、まさに民主、自由、人権の価値を同じくする国家間の長期間に渡る協力があるからだ。それらはアメリカ、日本、韓国、台湾であり、我々はこの地域で引き続き平和と安定が維持されることを希望している。我々は、中国はこのように大きな国であり、影響力が次第に大きくなっているのだから、台湾に向けた千以上のミサイルは必要ないと考える。中国は台湾人の心に認めてもらうためには、ミサイルではなく、善意を示さなければならない。我々は、もし中国が台湾に対する武力行使を放棄したら、台湾は多くのお金を他の必要な発展に投資することができる。他の国と同様、恐怖や脅威のない生活を送ることができると期待している。 

台湾人はとても善良で、平和を愛する人民だ。多くの中国人が観光で台湾を訪れ、台湾人の熱情と善良さを素晴らしいと評価している。中国の雑誌、週刊誌で 台湾で最も美しいのは阿里山・日月潭ではなく、台湾人の善良さだ、と讃え、このように小さく、このように善良で平和を愛する台湾に、中国は大国として、これほど多くのミサイルを台湾に向ける必要があるだろうか?我々の平和と善良さ、祖先が残したもの、我々の子孫が発展の機会を持ち続けることが出来るよう、我々は重い軍事負担を背負っていくしかない。民進党はこのような防衛の決心と能力を示すのである。大変かもしれないが、我々は自由がただではないことを知っているし、我々は全力で、我々の生存と発展の機会を確保していくのである。 

質問三:中天TV記者の質問:去年の総統選挙の前に蔡英文前主席がアメリカを訪問した際、一部のアメリカ人が、蔡前主席の中国とのコミュニケーション能力や、台湾海峡の安定と平和を維持する能力に不信感をもった。今回の主席のアメリカ訪問では、同様のチャレンジやプレッシャーはあるか。また、どのようにそれを乗り越え、彼らの民進党に対する疑念を取り除くか。

蘇主席回答:蔡英文氏は能力のある人で、両岸関係問題においても経験があり、選挙の期間中にアメリカ側と誤解があったのかもしれない。私は再度このようなことが起こらない事を希望している。
そして私個人は、民進党の両岸関係に対する対応は、台湾人民の願いと期待に最も合っていると考えている。馬総統でさえも去年の総統選挙で、結局言っていることは民進党と同じであった。つまり、台湾の前途は2300万人の台湾人によって決められるということである。しかし選挙の後、馬総統は彼の特使を中国に派遣して「一国両制」の意見を提出したのである。もしこのような説明を選挙の時にしたならば、馬総統は絶対に当選しなかったであろう。

我々の終始一貫する態度は、友人たちを信頼させることが出来るし、我々は誠意を持って、変わることなく、どこに行っても同じことを言っているのである。私はアメリカの友人たちとここ数日意見交換をし、お互いに非常に誠実であると思うし、アメリカ側は、民進党が自分たちの堅持する価値を決して手放すことなく、善意を持って両岸関係に対応していることが理解できたであろう。そして我々はこの1年来、中国との交流を強化し、民進党の機関だけでなく社会の各分野を通じて、人々と力を併せて中国の理解に努めてきた。民進党の内部だけで中国を理解してきたのではない。そして、同時に中国との交流を多く持ち、この間、多くの中国の学者や関連する政府の人たちが民進党中央本部やシンクタンクにやってきて、関連する討論会に民進党の幹部と共に参加して意見交換を行ってきた。

今講演会で述べたとおり、より多くの交流と対話が、誤解を減らし、台湾と中国の互いの理解につながる。プラスの方向に発展させていくのであって、お互い交流を行わずに対立するのではない。互いの関係改善が、両国の人民の一番の幸せにつながるのであり、私は、こういった方向に向かって進むべきと信じている。これまで、人々は、民進党が終始一貫した態度をとってきたことが分かるし、民進党が中国事務委員会と中国事務部を成立したことも、大きな支持を得られた。我々は台湾の大多数の主流な民意とともにあり、世界の友人たちにも、我々がしたことをみてもらい、我々のことをより理解し、信頼してくれることを期待する。  

質問四:自由時報記者の質問:主席がワシントンを訪問したときに、国民党の伯雄名誉主席が中国の習近平国家主席と対話を始めた。中国は一貫して台湾を「ひとつの中国」の枠組みに入れようとしているが、民進党はこれに対して憂慮や心配があるか。将来民進党が再度政権をとったら、どのように中国からの両岸政治対話の圧力に対処するか。中国がもし台湾を取り返しのつかない枠組みに入れようとしてくる場合、民進党は将来どのように対応するか?

蘇主席回答:民進党は両岸の交流は人々が決定する、ということを堅持すべきと考えており、台湾は民主体制、民主的で自由な生活を守り、未来は人々で決定することと考えている。両岸の交流は自由で、相互に対等なやり方を通じて行われるべきで、政府対政府の関係であり、政党対政党の利益交換ではない。よって今言った呉習会が、政党対政党のやり方であれば、国会の監督を受けないし、正常なやり方ではないのである。

中国は台湾を「一つの中国」の枠組みに入れることを将来も諦めないだろうし、これは中国の変わらない態度である。しかし民進党も同じであって、我々も決して「一つの中国」の枠組みに入ることを望まないし、決して台湾が中国の一部であるということを認めないのである。もし台湾の民意調査を見るならば、台湾の絶対多数の人々が「一つの中国」を認めていない。よって馬総統さえも、中国と政治協議ができないのである。私は中国が台湾に対して圧力をかければかけるほど、台湾は遠く離れていくだろうと思う。砂浜のかもめのように、捕まえにいかなければ、仲良くできても、もし無理やり捕まえようとしたら、鳥は飛んで逃げてしまうだろう。私は将来もこのようであると思っている。台湾の人々は民主自由を大切に思っており、中国がもし台湾の人々の心を獲得したいのであれば、中国も民主自由の方向に発展していくことだ。無理やり脅威でもって進めていけば、益々離れていくのである。民進党は民意の側に立っているのであり、引き続きこのような努力を続けていく。 

質問五:ジョンホプキンス大学中国研究のDavid Brown教授の質問。私はあなたのブルッキングスでの英語での講演会に感銘を受けた。講演会で民進党の基本原則と新しいやり方、こだわりについて話しており、先ほど言った和解と安定のやり方、実務についての説明を理解できたし、民進党の将来に希望があると感じた。また、両岸の認知の落差の解消に役立つとも思った。私の質問は、民進党の執政時の状況である。民進党の両岸政策は常に一致している、とのお話だったが、陳水扁前総統の任期内にはプラスな部分があったが、国内政治の背景から台湾の対外関係に緊張をもたらしたことがあった。あなたはこのような経験から将来の民進党に何か教訓とすることはあるか。今後民進党が再度政権の座についたら、あなたは過去のような状況が二度と発生しないと保障できるか。 

蘇主席回答:過去民進党の行ったことについては検討の必要があり、それにより前進できると思っている。過去我々の政策の一部は確かに国内の選挙や国内の政治に左右されることもあり、私は、国内事情にばかり注目してはいけないと考えている。党内の重要な会議や、国内外の講演会で強調するのは、台湾は自分で存在しているのではない。我々は何かをするときに、友人たちのことも考慮にいれ、彼らを驚かすようなことがあってはいけない。どんな事をするにも、一貫したやり方が必要だが、我々を取り巻く大きな環境における台湾の立場に注意を払う必要がある。私が今言ったように、過去行ってきたことを更に進歩させることができるか、同時に、過去友人たちを不安にさせたり驚かせたりしたようなやり方は、改善するべきであると考えている。
 
一つの価値や核心利益を堅持することは、ずっと口だけで繰り返すことではない。もし堅持しているのであれば、それは自然に行動であらわすことで、人々がわかるようになる。色々なやり方で友人や周囲に誤解と緊張をもたらすというのは、良くないことと考えている。今私が演説で話したように、私は価値を守り、しっかりと取り組む人間である。私は過去30年の政治の経歴で、原則を放棄したことはなく、このことが、友人や支持者らが、私が堅持する原則を信じてくれていることにつながっている。彼らが私に対して、不安を感じることもない。将来民進党は絶対に他の人々の信任を得るし、支持を勝ち取っていく。両岸では十分な信頼関係がない状況で、互いに互いの堅持している事をどう理解しあっていくか。どのように互いの緊張感を緩和し、物事を良い方向へ発展させるか。両岸とも努力しなければいけないことだ。民進党は自分の価値と立場を放棄せず、良い方向に向かっていくよう努力していく。

質問六:前AIT処長、Carnegie Endowment for International Peace研究院のDouglas H. Paal副会長の質問:講演会で台湾が他の国家とも締結を推進するべきという自由貿易協議について、また、どのように産業の調整を促進するかということについて、民進党が再執政した際、どうやって台湾経済成長の根本を立て直し、更なる台湾経済の成長につなげていくか。特に他の国家との競争について。

蘇主席回答:民進党は再執政を目指す政党として、また、責任感のある政党として、国民党を批判するだけではないし、相手が出来ないからといって下野しろとは言わない。我々は更に良い政策を出して、相手に勝つのである。国民党と競争している政党として、もし相手がだめであれば、もちろん民進党は競争に有利になるが、台湾の立場に立てば、我々は国民党の執政がひどいことを望んでいない。
よって、過去の間、執政に悪い部分があれば、民進党は多くの代替政策を出し、経済面では、実感できる経済政策を提出してきた。各方面において13項目の経済対策があったが、残念なことに、国民党は、未だそれらを採用していない。
 
もし将来民進党が執政の機会があれば、民進党執政時の成果を参照できるが、GDP成長率は現在の政府よりもはるかに高く、当時の失業率も現在よりずっと低いのである。私は、台湾は開放路線を行くべきであるが、仕組みや調整が整っていない産業も沢山ある。台湾は政府の長く非効率な審査の順番等を改めなくては、外資にとっても魅力がない。このたび米国商工会議所が発表した白書では特に馬英九総統に、もし総統が残りの時間で、1年以内に経済のやり方を変えなければ、すぐにレームダックになると指摘している。米国商工会議所が出した意見の多くは、台湾の問題点をしっかり指摘しており、台湾は多方面で大改革が必要である。民進党がもし再度執政の機会を得れば、過去の成績からも未来は保障されるのである。我々はもっと良くできる。しかし我々は馬総統が現在台湾の経済を良くすることを期待している。それこそが、台湾の人々の最大の幸せである。

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