2015年6月4日木曜日

蔡英文 戦略国際問題研究所(CSIS)演説:台湾は挑戦に立ち向かう-アジアの新しい価値の模範を作る


民主進歩党主席で総統選挙候補者の蔡英文は3日、アメリカ時間午後ワシントンアメリカのシンクタンクである戦略国際問題研究所(CSIS)で「台湾は挑戦に立ち向かう-アジアの新しい価値の模範を作る」と題した演説を行った。全文は以下の通り。
    
ご紹介ありがとうございます。そして、戦略国際問題研究所が我々を皆様のこのような立派なビルで歓迎くださっていることに感謝します。 Burghardt氏、Campbel氏、お集まりの来賓の皆さん、メディアの皆さんこんにちは。ワシントンを再度訪問できた事を嬉しく思います。そして、皆様とお会いできた事を光栄に思います。戦略国際問題研究所の皆さまが今回の講演会をアレンジしてくださったことに心より感謝いたします。

新しい挑戦に立ち向かう

今年の415日に私は民主進歩党の2016年総統選挙候補者に指名されました。私は、かつて権威主義と闘い、台湾の社会を今日のように自由と人権を尊ぶ民主主義の社会に変えた政党-民進党とともにいられることを非常に光栄に思っています。民進党もまた、台湾を変える重要な役割を担っている事を誇りに思っています。
     
私は総統の候補者として、国内外の挑戦-自由と民主主義が蝕まれ、台湾経済の自主性の不確定要素が日に日に増えていること-に対し、しっかりとした準備をしなければいけないと考えています。我々が様々な挑戦に挑んでいるとき、実は我々はアジアの新しい価値の模範を作り出しています。それは民主主義への参加、公平な分配と社会正義、イノベーションを基礎とする経済、そして積極的な平和外交などです。

民主主義の挑戦に応える

過去数年来、幾つか名のある国際機関が指摘してきたように、台湾の言論の自由、報道の自由や人権が後退している状況が続いています。去年の3月、両岸貿易協定が立法院での審査の過程で民主主義の原則に違反したために、大きな社会の力が爆発し、人々は政府のやり方を変えようとしました。現在もいくつかの社会の力が、公共の審議や選挙などを通じて、政治の過程に参加したいという熱意が高まっています。

新しい政治社会力に対して、もし透明でオープンな参加と対応の準備がなければ、政府の歩みは必然的に遅くなります。しかし、もし政府が民主主義のやり方で対応し、このような強大なエネルギーを政策決定の過程に入れ、随時民衆の監督を受け入れるならば、政府は一層効率的で民意に応えられるものになります。これが、我々が努力して推進していくことであり、台湾の民主主義を一層深いものにしていくということです。

経済の遅れと社会問題

近年の台湾経済の停滞と成長エネルギーの喪失は、多くの台湾人を非常に苦しませてきました。中国の台頭と世界の工場としての中国は、台湾の「効率駆動」型の経済成長モデルに衝撃を与えました。そして、日に日に所得格差が開き、仕事の機会がアウトソーシングされ給与の増加もストップしました。

経済の停滞は若い世代に厳しい衝撃を与えました。彼らの経済環境は彼らの親の世代とは比較にならないほど厳しいものです。その他、政府の退職基金は巨額の負債を抱え、今後の運用は難しくなっています。更に、家庭を基礎とする伝統的な社会のセーフティネットも、高度な都市化が進んだ台湾に、既に相応しいものではなくなってしまいました。このような状況下で、台湾の若者の身に降りかかっているプレッシャーはどれほど大きなものか想像ができるでしょう。

経済措置

将来、民進党が政権復帰した後の最優先の任務は、経済を前進させる新しい道を提供することであります。既に「イノベーション、雇用、分配」を核心理念にした新しい経済発展モデルを推進する準備が出来ています。

新しいモデルの主な目標は、「効率駆動」を「イノベーション駆動」のモデルに変換させることであり、台湾の経済競争力を再構築することです。新しいモデルは経済成長と社会のニーズの間でバランスを取っていきます。この他、新しいモデルは、台湾の経済の自主性を確実にするために、単一市場への依存を低くしたいと考えています。去年6月、アメリカの前国務長官ヒラリー・クリントン氏は、台湾がもし経済の独立性を失うならば、台湾は脆弱で傷つきやすくなるだろうと注意を与えました。  

私は、アメリカとの経済協力に関して、戦略的パートナーシップを結ぶことを希望しています。民進党は次の世代の基礎建設で交流と協力を進めていきたいと考えています。それは、物流網、クラウド、ビックデータ、などの通信技術を基礎とした新しい産業であり、それらは所謂第四次産業革命あるいは工業4.0バージョンなどと言われるものです。私は台湾とアメリカ企業の協力関係を強化し、台湾の情報通信産業を再構築していきます。

国際貿易については、台湾は環太平洋パートナーシップ協定への参加が急務であり、少なくとも第二ラウンドに参加したいと希望しています。よって、私は既にTPP特別チームを作り、TPP及び貿易自由化の重要な問題について話し合っています。討論の内容は、構造の調整と改革の必要性、国際ルールの遵守、法規と行政手順の合理化、及び特定産業の投資などです。我々は台湾が確実にグローバル化の挑戦に対処できるようにしていきたいと思います。

ここで、私はアメリカ政府が台湾のTPPへの参加希望に歓迎の意を示してくれていることに感謝を申し上げます。台湾はTPP加入の準備をしっかり行う決意があることを、重ねて申し上げます。

社会のセーフティネット

経済成長により政府は多くの資源を社会のインフラ建設に投資することができます。民進党は既に地域を基礎とした社会のセーフティネットを作る計画をしており、既に一部の執政県市では実施を始めています。私は社会住宅や老人介護の体系的な投資を計画しています。これらは高齢化が進む台湾社会の差迫ったニーズであります。

ここで特に強調したいのは、社会のセーフティネットへの投資は福祉方面だけではなく、経済的にも地元のニーズと合致し、雇用の機会を創造するものだということです。

台湾の経済力が更に競争力を持つために、民主主義を強化すると同時に、国家を守り、平和を維持する軍隊を作ることが必要です。我々は国際的な意義ある貢献を通じて、親しみやすい地域環境づくりに協力していきます。もちろん、中国との平和で安定した関係を維持することはそのうちの鍵となることです。

国防

国防において、私は、台湾は地域安全保障上の信頼できるパートナーになれると考えています。抑止力への適切な投資は重要な鍵となります。日増しに高まる軍事的な安全の脅威に対して、台湾が非対称軍事力を発展させることは、抑止戦略に重要な要素です。具体的には友好国家と軍事協力関係を強化し、現代的な軍隊の精鋭訓練や必要な防衛装備の取得などです。
志願兵制度への移行はチャレンジであり、私は現役と予備部隊に必要な訓練と教育を行う決心があります。軍隊を高度に専門化させるだけでなく、服役と退役後の雇用がうまくいくようにしたいと考えています。

台湾関係法と地域安全の共同利益に基づいて、台湾とアメリカの軍事協力を強化維持していくことは重要です。台湾はアメリカの信頼できるパートナーであり続け、地域の平和と安定を約束し、ともにインターネットの安全などのこれまでにない安全の脅威などにも対応していきます。
軍事システムの購入とプラットフォーム取得のほか、私は本土の国防計画で更に多くの投資を行う決心があります。研究開発への投資や、長期的な国防ニーズに適したものなどです。これらの国防投資は最終的に台湾の経済産業生産にも実質的な利益となり、長い目で見れば、国防と経済の投資にもなります。

対米関係と国際参与

共同の価値と共同の利益を基にして、台湾とアメリカの間には、政治、安全、経済と文化で特別な感情があります。しかし、台湾はこのような関係を当然のものと考えるべきではありません。台湾とアメリカが緊密に連携するためには、双方の共同利益を増やしていかねばなりません。台湾が世界で支持を得るためには、自分たちを信頼できるパートナーに高め、積極的な平和外交を進めていくことと考えています。

私の指導のもとで、国際社会で差別を受けなけなければ台湾は国際的な仕事で有意義な参加と貢献が出来ると考えています。人道救助、災害救援、医療協力、及び経済援助における共同の努力です。台湾で活躍している非政府組織は後方支援の力となっています。台湾の中部には非常に現代的な災害の救援訓練センターがあり、このセンターの機能を拡大し、国際的な訓練センターにしていきます。私はコンテナ・セキュリティ・イニシアティブとメガポート・イニシアティブのモデルでもって、アメリカのテロ対策の協力を推進し、地域の国家と経験を分かち合っていきます。

過去民進党の政権時に、台湾民主基金会を成立し、外交部の中にNGO委員会を設立して、民主主義の価値と国際的な活動に有意義な参加を推進してきました。もし民進党が再度政権に就くことになれば、この2つの活動を再度始めたいと思います。
民進党政権復帰後は、国際的に貢献し信頼できるパートナーになることを、大切にしていきます。

両岸関係

私は一貫した予測可能な持続的両岸関係を約束します。
両岸関係の発展には長い目でみた考え方が必要です。民主化後の台湾は、三人の民主的に選ばれた総統の執政や多くの民主運動を経て、強大な社会の意志が鍛えられてきました。自由と民主主義の価値は深く台湾の人々の心に根付いています。人々が選んだ総統は、全ての台湾人を代表します。よって、両岸政策の推進は政党の主張を超え、異なる意見を包容するものでなければいけません。リーダーが政策を決定するときは社会のコンセンサスを考慮しなくてはならず、台湾内部には既に一般的なコンセンサスが存在しており、それが、現状維持なのです。

私は何度も現状維持の立場を表明してきましたが、これは全ての関係者にとって最も利益のあるものと信じています。
よって、総統当選後は、中華民国の現行の憲政体制の下で、普遍的な民意に基づいて、両岸関係の平和と安定した発展を推進していきます。

両岸はともに、この20数年来に渡る話し合いや交流で蓄積された成果を大事に思い、守るべきであります。私はこの固い基礎の上に立ち、両岸関係の平和で安定した発展を推進していきます。

私は「両岸協定監督条例」の法制化を進め、両岸の交流協議持続のために、全般的な規則を打ち立てます。進められている協議や審議中の両岸協定は、監督条例に基づいてチェックし、引き続き協議を進めていきます。

最後に最も重要なことは、民主的な仕組みを強化し、人々の将来の選択権を確保することです。両岸の交流と対話を進めていくと同時に、私はその過程で十分に民主的かつ透明性があり、利益が社会で公平に共有されるものにしていきます。

結論―新しいアジアの価値を打ち立てる

台湾はまさに歴史と文化の交差点にあります。多くのアジアの人々が権威的な統治に苦しんでいるときに、台湾では既に民主主義が実現したこと。それを誇りに思うとともに、我々は苦労して手に入れた社会の政治権利や個人の自由、それに伴って生まれてきた公民社会と自由な選択権を大切にしなくてはいけません。

アジアで民族主義、拡張主義及び軍事衝突が日増しに脅威となっている時、我々は積極的平和外交を推し進め、貢献と分かち合いの精神でもってこの地域の平和と安定を築き上げていきます。

グローバル化により、各地で経済の混乱や、資源の枯渇と公平正義に背く現象が引き起こされてきました。特に若い年代に対して、民進党は既に台湾経済発展の新モデルを推進していく準備を始めています、イノベーション、雇用と公平分配を基礎とする新経済モデルに向かい、同時に積極的に地域を基礎とする社会のセーフティネットを作り、伝統的な家庭を主体としたケアシステムを補い、イノベーション、永続、分配と社会正義の重要な基礎としていきます。

最後に、アジアの新しい価値モデルを打ち立てていく中で、台湾は一つの模範と希望の力になっていけると考えています。私たちはこのアジアの新しい価値でもって、台湾を照らし、アジアを照らしていきます。


ご清聴ありがとうございました。

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